2014年10月13日月曜日

トンネル残土からのカドミュムなどの重金属汚染事件(2003年久々利川水系新滝が洞ため池)

水源のため池のカドミュム等重金属汚染事件(2003年4月26日)についての可児市市民団体「水源汚染問題ネットワーク・可児」の報告「水源汚染と闘って4年・可児市から」転載したもので、可児市久々利大萱地区は、過去に久々利川が、カドミュムなどの重金属に汚染され、その原因が東海環状線のトンネル工事残土が、上流のゴルフ場に放置され、下流にある農業用ため池を汚染したことだった。可児市の市民団体がそれから4年、さまざまな運動を展開した報告をブログに掲載した。(2007年2月6日)今、リニアのルートが再び久々利大萱地区を地上橋で通過する計画が一方的に発表され、地上橋部分からリニアの膨大なトンネル残土が排出され、場所は明らかにされないが、付近に置き場が作られる。この事件の記憶がまだ残っている久々利大萱地区の住民からは反対の声が強くわき上がっている。
記録に残すためにこのブログに掲載する。

水源汚染と闘って4年・可児市から2007/02/06


法面と処理プラント

新滝が洞池

ストックヤード工事看板

ストックヤード

水処理施設

法面


 岐阜県・可児市の市民団体「水源汚染問題ネットワーク・可児」(代表:梅田裕孝氏)が国交省に可児市公共残土ストックヤードからの排出水の対策を求めてまもなく4年になる。1月20日に可児市で集会を開いた同会は、提訴をも視野に入れた活動を引き続き今後も、粘り強く実施することを確認した。
    
 ことの発端は2003年4月26日。久々利川水系・新滝が洞溜池で約1000匹の魚が死ぬ事件が起きたこと。岐阜県環境課、可児市環境課などの調査の結果、上流に設置された東海環状自動車道路建設残土ストックヤードから、強度な硫酸酸性でカドミウムなどの有害重金属を含む排出水が久々利川に流出していたことが判明した。

 可児市周辺に分布する美濃帯と呼ばれる地層が掘り起こされ、黄鉄鉱などの硫化鉱物と、酸素を含んだ雨水や地下水が化学反応を起こし硫酸が生成された。その硫酸がカドミウムや亜鉛など重金属類を溶かし、排出水となってストックヤードから新滝が洞溜池へ流入したのだった。

 上記ストックヤードは可児市が借地して建設した施設で、国交省直轄事業の道路建設で発生した残土を2000年9月から2003年4月までに88.7万立方米搬入していた。また可児市は国交省多治見工事事務所長と、残土1トンあたり1170円を可児市に支払うと覚え書きを交わし、予定通り95万トンが搬入されれば11億1150万円となる事業だった。

 ストックヤードは残土の仮置き場のため地元住民への説明会は開かれたが、残土の搬入時等の交通事情に関する説明が主で、住民は誰もが残土の仮置き場だと思っていた。名称は「可児市公共残土ストックヤード」であるが、実際に残土を外へ運び出すことはなかった。実態は可児市市議会で追及を受けた建設水道部長が「ストックヤードと英語で言った方が体裁がよいと思っただけで、実質は埋め立て処分場だった」と答弁しているように埋め立て用地だった。

 1973年に愛知県犬山市で同様の汚染事件が起きている。汚染水が周辺の水田へ流入し産米からカドミウムが基準値を超えて検出された。汚染地域指定を受け約10億円の国費で耕作土の入れ替えが実施された。その後、指定を解除されたが行政の監視調査が現在も続いている。

 可児市のケースで国交省は重金属対応処理プラントを設置したが、ストックヤード各部からの排水の多くがpH3~5の酸性を示し重金属類を含有している。プラントでの処理水は調整池下流に放流されている。

 国交省はストックヤード天端部を全面覆土する工事を行ったが、水量は減ったものの酸性水の浸出は止まっていない。依然として降雨時の後には、pH4程度の酸性水が浸出している。さらには、地震や大規模な風水害でストックヤードが崩落する可能性もあると言われている。

 現在、人体に有害なカドミウム、鉛、銅、亜鉛など有害重金属類は重金属対応処理プラントで消石灰、希塩酸を用いて処理を行なっているが、地元の農家はこのような処理水を使って米作りをしたくないと言っている。また、将来的に生態系に影響を与えるのではないかと懸念される。

 地下水を水道水源とする大萱地区住民は、底部に遮水工が施されていないストックヤードからの酸性浸出水による地下水の汚染を恐れている。国土交通省はストックヤード底部には固い岩盤があるから地下浸透はしないとしているが、その岩盤にひび割れがないという保証はない。

 以上の理由などから同会は汚染残土の全面撤去と水源汚染水への対策を求めて岐阜県公害調停委員会に調停を申請した。調停において、久々利川水系の水を元の状態に回復させ、監視や点検を必要とする処理プラント施設が河川上流に存在しない、地震や風水害によるストックヤードの決壊、崩壊を憂慮せずに済む状態に戻すことを求めた。

 しかし06年10月27日岐阜県公害審査会は、現地調査をする事もなく、「合意成立の見込みがない」と調停打ち切り通知を突然出してきた。肩透かしの対応のまま汚染水の滲出は止まらず、住民の不安や不信、怒りと憤りは募るばかりで、暮らしより産業優先、住民より企業保護という行政の姿勢が露骨に現れているとして、同会は強く抗議すると同時に、2月1日に事務局会議を開き、これまで通り、週1回程度の調査・監視活動を実施するとともに、水源の原状復帰を要求し続けることを決めた。

(上野数馬)

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