2016年2月28日日曜日




しんぶん赤旗(2016年2月28日付)に掲載された記事です。
予想外の高い放射線量に測定した市民もびっくり。
自から調査もせずに安全性を主張するJRに対する疑惑がますます高まります。


2016年2月27日土曜日

JRのリニア地下水、土壌検査結果報告漏れ(2016年2月22日岐阜県ホームページ)

リニア中央新幹線工事の事前調査における観測井戸からの鉛の検出等について(岐阜県ホームページより)

本日(2月22日)、東海旅客鉄道株式会社(以下、「JR東海」という。)から、リニア中央新幹線建設工事に先立ち行った地下水調査において、地下水環境基準を超える鉛が検出されたとの報告がありましたのでお知らせします。
 また、JR東海が平成24年から26年に行った調査において、基準値超過が確認された地下水及び土壌調査の結果についても報告漏れがあったとの報告を受けました。
 「岐阜県地下水の適正管理及び汚染対策に関する要綱」(以下「地下水要綱」という。)では、地下水調査等の結果、有害物質による汚染を新たに確認した場合は、速やかに地域を所管する県事務所に報告することとなっています。
 今回の事態については、JR東海に対し厳重に注意し、これまで同社が行った地下水調査等の全容、報告が遅れた経緯及び再発防止策を速やかに報告するよう指示したところです。

1.JR東海からの報告内容

(1)現状(工事前)把握のため実施した調査結果
【地下水調査】
井戸の所在地
項目
分析結果
地下水環境基準
基準超過倍率
採水年月日
中津川市山口地内
0.065mg/L
0.01mg/L以下
6.5倍
H28.1.6
瑞浪市日吉町地内※
0.042mg/L
0.01mg/L以下
4.2倍
H28.1.6
※当該井戸は、H25.6.6及びH26.1.30に実施した調査においても、基準値超過が確認されています。(分析結果:0.18mg/L及び0.029mg/L)

(2)平成24年から26年に実施した調査結果
【地下水調査】
井戸の所在地
項目
分析結果
地下水環境基準
基準超過倍率
採水年月日
瑞浪市大湫町地内※
ふっ素
1.1mg/L
0.8mg/L以下
1.4倍
H25.1.31
多治見市北丘町地内
総水銀
0.0094mg/L
0.0005mg/L以下
18.8倍
H25.1.29
※当該井戸はH28.1.13に実施した調査においても、基準値超過が確認されています。(分析結果:0.94mg/L)
【土壌溶出量調査】
調査場所
項目
分析結果
土壌環境基準
基準超過倍率
採取年月日
可児市久々利地内
セレン
0.023mg/L
0.01mg/L以下
2.3倍
H25.1.8
中津川市山口地内
ふっ素
1.2mg/L
0.8mg/L以下
1.5倍
H24.12.22
なお、JR東海からは、その他の項目についても調査を実施したが、基準超過はなかったとの報告を受けています。


2.汚染の原因

現時点では不明です。なお、周辺地域には、今回超過した有害物質を原料に使用する工場・事業場はありません。

3.今後の対応

(1)地下水調査等について
地下水要綱に基づき、県は、JR東海からの報告を受け、井戸等が所在する市とともに対策会議を開催します。
その後、県として市等の協力を得て、地下水環境基準を超過した井戸等について再度調査するとともに、当該井戸から半径500mの範囲内、土壌環境基準を超過した土地については、超過した有害物質ごと当該土地から定める範囲内(セレンは半径80m、ふっ素は半径250
m)において、それぞれ各戸訪問により井戸水の水質検査及び利用状況調査を直ちに実施します。
(2)地域住民への情報提供について
周辺地域は上水道が普及していますが、この地域の家庭・事業場に当該事実についてお知らせし、井戸水を利用している場合は、水質検査結果が判明するまでの間、飲用自粛を呼びかけます。なお、検査結果についても、各井戸水所有者に提供します。
(3)JR東海が行った調査結果の確認
県として、JR東海がこれまで行った地下水等の調査結果の全容の報告を受け、その内容について再確認します。

参考

  • 水銀に関する説明
「水銀」は常温で液体である唯一の金属で、水に溶けにくい銀色の物質です。各種電極に使われているほか、体温計や蛍光灯などに使われています。脳の中に蓄積しやすく、体内で酸化反応を受ける前に脳に移行すると中枢神経障害を起こすおそれがあります。また、口から水銀を取り込んだ場合について、子どもが体温計の水銀を誤って飲み込んだ事故では影響はほとんどみられなかったと報告されています。
  • 鉛に関する説明
「鉛」は、比較的柔らかく加工が容易な金属で、バッテリーやはんだの原料として使用されています。以前は、ガソリンへの添加剤、水道管などにも使用されました。また、化合物としてガラスに加えられたり、塩化ビニル樹脂の安定剤の原料などに用いられています。人体への蓄積性があるため、人の臓器や組織に通常でも存在し、慢性中毒では消化器症状、貧血などが認められます。
  • ふっ素に関する説明
「ふっ素」は反応性が高いため、自然界ではさまざまな元素と結合した化合物として存在します。環境中では主に水中に存在し、温泉水や火山地帯の地下水にかなり高濃度のふっ素が含まれていることがあります。ふっ素を継続的に飲み水から取り込むと、斑状歯(歯に褐色の斑点や染みができた状態)になることがあります。
  • セレンに関する説明
「セレン」は、常温で赤褐色から暗灰色の固体で、コピー機の感光ドラムや太陽電池に使われているほか、ガラスや陶磁器の着色剤や顔料として用いられています。人にとって必須元素とされ、セレンの欠乏が原因と疑われる疾患として中国東北部の克山病(心筋障害の一種)があげられています。一方、人の慢性セレン中毒では、毛髪と爪の脆弱化・脱落が生じます。

参考:化学物質ファクトシート-2012年版-(環境省発行)

2016年2月19日金曜日

愛知県、名古屋市OBが助っ人に リニア名古屋駅用地買収で(2016年2月19日中日新聞)

愛知県、名古屋市OBが助っ人に リニア名古屋駅、用地買収で 

2016/2/19 朝刊
 二〇二七年に開業するリニア中央新幹線名古屋駅の建設で、愛知県や名古屋市のOBが用地買収の助っ人として登場することになった。公共事業が盛んだった時代に活躍し、難交渉の舞台裏を支えてきたベテランたちだ。地権者に補償額などを示す交渉が本格化するのを前に、四月から第一線に復帰し、難航が予想される交渉を手助けする。
 用地取得のノウハウを持つ名古屋市の建設コンサルタントなど十社でつくる共同企業体が一月、JR東海の委託で買収交渉を担う名古屋市の外郭団体「名古屋まちづくり公社」から業務委託を受けた。この十社が国や県、市のOB計二十人以上を雇って活用する。
 OBらは四月から地権者に補償内容を説明する業務などを引き受ける。
 公社も県や市出身の用地交渉のベテランを抱えるが、公共事業が抑制される中で現役世代が経験を積む機会は減少。道路建設など用地取得が活発だった時代に腕を鳴らしたOBは得難い能力を持つ人材だ。
 リニア名古屋駅の用地買収は、名駅周辺の二万三千平方メートルが対象。地権者は登記簿上だけで約百二十人おり、移転を求められるテナントなどは約二百軒。JR東海は一八年度末までに買収を終える計画で、公社のほかに阪神高速道路(大阪市)の協力も得ている。
 舞台となる名駅周辺はリニア開業への期待などから地価が急騰し、駅西側は立ち退き後に移転営業できない風俗店も含まれる。地価の公示価格や不動産鑑定士の評価額を参考に公共事業と同じ基準で買収額などが算定されるが、将来の地価上昇分は含まれない。難航する可能性が指摘され、買収の成否はリニアの開業時期を左右する重要なポイントの一つだ。
 名古屋市も買収交渉を支援するため、四月から公社に出向させる職員を九人増の三十人とする方針。担当者は「来年度はリニア駅工事に向けて計画を作り上げる正念場の年。開業が遅れないよう、公社の体制を強化したい」と話している。

2016年2月18日木曜日

東濃ウラン鉱床とリニア路線上の放射線量測定活動 (2016年2月18日 春日井リニアを問う会→リニアを考える可児の会)

2016年2月18日に春日井リニアを考える会の川本さんから送られてきたメールです。2月16日に行った放射線量測定調査に関する報告です。


こんにちは
「春日井リニアを問う会」事務局の川本です
先日216日 東濃ウラン鉱床とリニア路線ルート上の放射線量の調査活動を行いました。
この活動にはストップ・リニア訴訟の弁護団に参加している高木輝雄先生の意向も踏まえて企画しました。
当日は 小雪も舞う中を高木輝雄先生、ジャーナリストの樫田秀樹さん地質学者の松島信幸さん今村一路赤旗記者をはじめ
リニア可児の会2名 飯田リニアを考える会2名 岐阜各務原から1名 西区から1名 春日井リニアを考える会から1
そして私、川本の12名が参加しました。「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表が案内役を引き受けてくださり
6箇所の調査地点を放射線量測定器を4台を持参し それぞれの機器の測定特徴を確認しながら行いました。
当日の概要はジャーナリストの樫田秀樹さんが早々とブログにまとめて発表してくれました。(添付資料を参照)
全体として強く印象に残ったのは東濃ウラン鉱床よりも リニア路線245km地点の中心線の真上の放射線量の測定値が高くなったということです。
さすがに 参加者全員が驚きの声を上げていました。
240m地点の非常口から出る残土置き場予定地の調査を地元の方の案内で調査を行いましたが途中道路拡幅工事が行われており立ち入ることができませんでした。
地元の方の説明では工事が始まれば1分に一台のダンプカーが集落の中を走り抜けることになるとのことでしたが
この日も道路拡幅工事でダンプカーがまさに11台の間隔で出入りしており 道幅が狭いため広い所で向きを変えバックで拡幅現場まで走行して積んで出てくる状況でした。
私たちが路肩に止めて残土置き場予定地へ向かう思案をしていたのですが通りかかったダンプの運転手からこの先に広い所へ止めてくれと言われるくらいに狭い道でした。
拡幅工事はリニア残土を受け入れるためのものでないかと 他にその理由が見当たらない静かな集落でした。
公民館の敷地の中には公設のラドンガス測定機器が設置されており まさに東濃ウラン鉱床群の真っただ中をリニア路線が走行するわけです。
JR東海は 旧動燃開発機構のボーリング調査資料のみでウラン鉱床を回避している(9-2-2)と説明し 自ら何も調査をしていない現状で 私たちの調査結果から ウラン残土とラドンガスの発生による
地域の自然・生活環境の汚染と破壊の危険は拭い去ることができませんでした。

<東濃ウラン鉱床調査地点地図.pdf>

2016年2月14日日曜日

シールド工法だから地下水は漏れない? JR馬喰駅で路盤浸水・運休(東濃リニア通信2016年2月14日)

「JR馬喰町駅で路盤浸水・運休」 「シールド工法だから地下水は洩れない?」 (坂巻さん)

おはようございます。
 「リニアを問う 愛知市民ネット」事務局に届いた、メールを紹介させていただきます。
 事務局員には、このメールの差出人「坂巻幸雄様」のご了解を得ていただきました。但し、これはあくまでメモであり、訂正の必要があるかもしれないことをご承知置き下さい。

 「日本科学者会議リニア研究委員会のメンバー(地質学の専門家)から送っていただいた貴重な情報(メモ)を転送します。JR東海の説明に惑わされないように、もっともっと事実を知り、かつ理解者を増やしていく努力が必要だと改めて思わされます。」
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 差出人: 坂巻幸雄
 日時: 2016年2月9日 21:46:04JST
 件名: Fw: リニア・メモ(2) 2/8JR馬喰町駅で路盤浸水・運休

 JSAリニア研究委の皆様

 NHK-TV他によると、昨8日17時頃、JR総武快速線馬喰町(ばくろちょう)駅から「トンネル内の湧水が増加して路盤が浸水している」との通報があり、18時過ぎから列車の運行を止めて排水作業を進めた結果、19時15分に運転再開にこぎ着けたとのことでした。
 湧水点はホームに沿った上り線海側側壁で、私のTV画像からの目測によれば、約400立/分程度の湧水量だったと見込まれます。
総武快速線は1972/07/15に開業、馬喰町駅は地下5階相当の、-27.14mに建設されました。単線型シールドトンネルを2本平行して掘り、次いで中央の隔壁部分を切り拡げてホームを設けた構造です。
 この駅の漏水がひどいことは先の例会でも報告しましたが、今回の例を見ただけても、「シールド工法だから地下水は洩れない」とするJR東海の決めつけが、どんなに根拠の薄いものなのか、良く判ります。

 JR東日本では今回の事故の誘因として、近隣のビル工事を考えている模様ですが、そもそも東京下町の地下水位が大幅に下がっていた建設当時とは違って、今や東京地下駅の「浮き上がり抑止」対策が取られている時代です。トンネル自体の防水性能が当初計画の通り維持されているのかどうか、リニアを論じるのならば、JR東海はそのあたりのデータを、まず示してからにするべきでしょう。
 
                          <了>

2016年2月10日水曜日

貴重な湿地を残したい リニアアクセス道路 中津川住民ら「ルート変更を」(2016年2月10日中日新聞)

貴重な湿地を残したい リニアアクセス道路、中津川住民ら「ルート変更を」 

2016/2/10 朝刊
 岐阜県中津川市に造られるリニア中央新幹線岐阜県駅(仮称)へのアクセス道路となる地域高規格道路建設により「貴重な植物をはぐくむ湿地が失われる可能性がある」として、地元住民や日本自然保護協会(東京)がルート変更を求めている。事業を進める県は「湿地を避けて設定しており、最適のコース」として、二〇一六年度にも測量に着手する構えだ。
 湿地は、市を東西に貫く木曽川南岸の丘陵地にあり、ラムサール条約に登録されている愛知県豊田市の「東海丘陵湧水湿地群」と同じ構造の湧水湿地。東海地方にしか自生していないハナノキやシデコブシなどの絶滅危惧種が群生し、特にハナノキはルート周辺に約八百本あり、国内最大の群生地とみられている。
 岐阜県によると、アクセス道路は片側一~二車線の延長五キロで、湿地帯の西側を南北に沿うように計画されている。
 昨年十二月に現地を調査した筑波大大学院の佐伯いく代准教授(生態学)らは「貴重な植物の群生地を避けても、周辺で切り土や盛り土をして地形を変えると水の流れが変化して湿地が乾燥するため、影響は避けられない」と指摘。日本自然保護協会も一四年六月、岐阜県に地形改変をしないよう求める要望書を出した。
 湿地のある土地を所有する浅野朝臣さん(79)は「貴重な動植物を犠牲にしてまで、このルートにする必然性がない」と話す。
 これに対し、県道路建設課は「湿地よりも低い斜面に造り、湿地へ流れ込む水に影響がないよう配慮した」と反論。今後は、地下水の流れを調べた上で、湿地に影響が出る可能性があれば、道路の構造と工法を検討するとしている。
 アクセス道路の開通は、リニアが開業する二七年までの予定。環境影響評価(アセスメント)は、対象道路ではないため実施されていない。

2016年2月6日土曜日

それでもリニアには参画しない!ゼネコン社員の本音「死人が出ても・・・なんて時代じゃない」ニフティニュース 

それでもリニアには参画しない! ゼネコン社員の本音「死人が出ても…なんて時代じゃない」

2015年12月28日(月)6時0分配信 週プレNEWS


リニア建設工事の最難関とされる南アルプスの山梨県側、約8キロの区間で大成建設、銭高組、佐藤建設のJV(企業共同体)での落札が決まり、12月18日に起工式が行なわれた。来春には実際の重機による鍬(くわ)入れが始まるところまで来てしまった。
リニアの着工が始まってほぼ1年、その間も多くの問題をはらんだこの巨大事業に「JR東海は説明責任を果たしていない」として、市民団体などが異議を訴え続けている。
中心となって活動する「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」では、認可した国土交通省に異議申立書を提出、だがなしのつぶてで回答を先送りにする態度に、取り消しを求めての行政訴訟まで視野に入れていることを前回記事では伝えた。
さて、確かにリニア工事は着工された。リニアの始点でもあり終点でもある品川駅と名古屋駅でも資材置き場の建設などはすでに始まっている。だが、逆にいえば、営業本線を兼ねることになった山梨実験線の約43キロを除いて、着工されたのはその区間だけだ。他の区間は発注もされていない。
「それは当然だと思う」と語るのは某準ゼネコンのベテラン社員・Bさんだ。ちょうど1年ほど前の記事「リニア特需を期待?と思いきや、ゼネコンがどこも手を出せない理由」でも登場いただいている。
「危険なリニア受注で会社は損をする」として、リニア事業に参画するつもりはないと明かす内容だったが、その方針に変化がないかを再度尋ねたところ、きっぱりと「社長を筆頭に会社としてリニア事業には参加しません」と回答した。理由は以前とほぼ同じだが、若干の補足が必要だ。
―まず問題なのが、「総価請負方式」というものだそうですが…。
「総価請負方式とは、日本で一般化した請負形態。建設会社は請負報酬を一定の金額に定めて工事契約をします。簡単にいえば、これと決まった受注額以上は1円ももらえない。特にリニアは『JR東海の自費だけで建設する』のが前提なので、徹底されることになる。
でも、品川・名古屋の建設費5兆5千億円の見積もりをそのまま信じるバカはいない。おそらく、その2倍、3倍はかかります。となると、今、リニアを受注したら、本来もらえるはずの3分の1しかもらえないことになる。それも建設だけじゃない、水枯れを起こしたら、その補償だって30年間も当社がやる羽目になる」
―大成建設などは南アルプスの山梨県側工事を受注しましたが?
「大成建設はゼネコンでは唯一、世襲制ではない会社です。それはそれでいいけど、世襲は世襲で、経営の失敗で同族に迷惑をかけられないとの思いもあり、そこが暴走経営へのブレーキになっている一面はある。だが、大成は海外事業で赤字を出すなど失敗してもなんとかなるという、よくいえばチャレンジ精神、悪くいえば向こう見ずな経営色が強い。今回もリニア工事の先鞭(せんべん)をつけたという、名目を得たい思惑もあるのではと」

―では、他のゼネコンもリニアには参入しそうにない? 


「積極的に参入したいとの情報を私は得ていないです」 
―逆に考えれば、もしリニア建設への国費投入に踏み切ったらゼネコンの食指も動く…。
「可能性はあります。私の推測だけど、すでにゼネコンが国に金を出させようと働きかけているかも。JR東海なんかよりもそのへんはずっと得意な業界ですから」
―もし国費投入があれば、Bさんの会社も方針転換を?
「それでも参入はしない。特に南アルプスは超難関工事になるのは間違いない。トンネルから山の稜線まで、一番深いところで1400メートルもある。つまりトンネル工事では山のものすごい圧力で出水し、トンネル内が激流になるから人が死にます。昔のトンネル工事は人が死ぬのも当たり前だったけど、もうそんな時代じゃない。
それに、今はひとりでも死ねば、その企業の評価は落ちる。『受注者責任』も商法で厳格化されて、下請け、孫請け、ひ孫受けの社員が死んでも、それは元請けの責任になるから、昔のように知らんぷりはできない。だからゼネコンも慎重になっている」
―南アルプスはあちこちが地質のもろい『破砕帯』で構成されています。
「破砕帯っていうのは、常に水があちこちに泳いでいる。水の動きなんて読めないよ。掘ってみないとわからない。どこが受注するにしても、どんな工事になるのかは想定できないね」
本当にゼネコンは国から金を引っ張ろうとしているのか? そうだとすると、兆単位の金なだけにやがては発覚する。その時、今はリニアに無関心な国民もさすがに怒り、マスコミも騒ぎ、全国的な社会問題と化す。リニア実現には、これからが本当の闘いなのだ。
(取材・文・写真/樫田秀樹)