2018年9月2日日曜日

名駅近くで手荒い地上げ リニア再開発で地価高騰(2018年9月2日中日新聞)

名駅近くで手荒い地上げ リニア再開発で地価高騰 

2018/9/2 朝刊
長屋の扉を取り外す、不動産会社の関係者とみられる男性=名古屋市中村区で
 リニア中央新幹線開通に向け、再開発に沸く名古屋駅近くで、借家人がいる古い木造長屋の一部が、所有者側によって破壊されるトラブルがあった。壊したのは長屋を管理する不動産会社の関係者とみられ、住人らは、不審者の侵入や放火の危険性など治安への影響を懸念。会社側は秋にも取り壊しに入る構えで、立ち退きを住民に迫っている。一帯では地価が上昇を続け、ビルやマンションなどへの建て替えが進む。業界に詳しい関係者は「集合住宅の空き家が増える中、ほかの地域でも起きる可能性がある」と指摘する。
 名駅から南西に徒歩十分ほどの、木造民家や商店などが並ぶ昔ながらの住宅街。三月下旬、ゴムハンマーやくわを持ったスーツ姿の男性らが、長屋の空き室となった部屋の扉や窓を次々と壊していった。一階の窓は大きく割れ、戸が外れた玄関からは裏庭までが丸見えの状態に。半年近くたっても放置されたままだ。「誰でも入れる状態で怖い。放火やいたずらに遭うのではないか」。長屋の隣の部屋に住む七十代の男性は、不安を口にした。
 関係者によると、長屋は約六百三十平方メートルの敷地に立ち、十戸が入る。築七十~八十年経過し、今も住むのは三世帯。二〇〇八年に三重県の地権者から大阪の不動産会社に土地・建物の所有権が移り、さらに一一年に関連の別の不動産会社が購入したという。
 住民男性は祖父の代から住み続けていたが、不動産会社に所有権が移った〇八年ごろ、立ち退きを求められた。ここ数年は連絡がなかったが、ハンマーを持って突然現れた男性らは、不動産会社の関係者を名乗り「許可を得ている」と説明したという。
 その後、会社側から説明はないまま、七月に一部の住民に九月中の退去を求める通知書が届いた。通知書では「老朽化が進んでいる。家賃も低廉で駅近郊の再開発に伴う地価上昇を考慮すると、資産を有効利用できていないことは明白。経済的損失は多大」などと主張し、十月初旬にも解体工事に入るとしているが、借家人側の弁護士は「強制的に退去させる法的根拠はない。建物全体の価値を損なう行為で、バブル時代にあった地上げに似ている」と反論する。
 長屋を所有する不動産会社の担当者は本紙の取材に「取材にはお答えできない」とした。
 扉や窓が壊された後、不審者の目撃情報もあり、管轄の消防署は名古屋市火災予防条例に違反する恐れがあるとして、会社側に対策を取るよう文書を出した。だが、違反に対する罰則規定がないため「根気よく伝えるしかない」(担当者)と話している。
 (佐々木香理)

2018年8月1日水曜日

大深度法の前提崩れる(2018年7月)


東京外環道のシールド工法で酸欠ガスが大深度地下から噴出(シールド工法でも安心できない、大深度でも地表に影響大であることが明確に→大深度地下法の前提崩れる)


大深度法では、地表面(地下室分を含む)に影響を及ぼさない条件

で、使用権を無償で
設定できるとしていました。
しかし、この前提が崩れました。東名ジャンクションの事業用地で
本格掘進準備中のシ
ールドマシンの影響で、
外環と並行して流れる野川に気泡が発生しました。この気泡は、酸
素濃度が薄かったと
事業者は証言しています。
酸素濃度が薄いガスが充満すると、健康に大きな影響を与えます。
住宅街で発生する可
能性は否定できません。

野川の遊歩道にある観測井戸や工事ヤードの中でも地下水が噴出し
ました。観測井戸は
、浅い帯水層までのもので、
その帯水層が気泡で加圧されたため噴出したのだろうと、事業者は
説明しています。
工事ヤードの中の水の噴出は、地表部にあるA層という粘土層を突
き抜けているため、
問題は深刻です。
水を通しにくい地層があっても、地下工事による圧力で地下にある
水が噴き出すことが
分かったからです。

大深度だから、掘っても地表面に影響はないといってきた事業者の
説明が、嘘であった
ことが証明されました。
やっぱり、地下を掘ると、地上にも影響があるのです。

これは、世田谷区だけの問題でしょうか?いえ、
地下と地上の間に何らかの裂け目、穴などが開いている可能性があ
ります。
そうなれば、地下工事による気泡や地下水が地上部まで登ってくる
可能性は否定できま
せん。
閑静な住宅街に、突然酸欠ガスや地下水が噴き出すことになりま
す。
こんなことが起こるところで、落ち着いて眠れますか?
しかも、気泡や地下水が出なくなった後に残るのは、通り道の穴で
す。
この穴を通って、今度は浅い地下水が地下トンネルの周辺に集まっ
てくる可能性もあり
ます。
そうなれば、地盤の陥没、沈下のおそれが広がります。

地上に影響を与えないことを理由にした大深度法。
立体都市計画を活用すれば、地下の利用が進むと考える都市計画
法。
地表部に影響を及ぼすことが分かった以上、こうした法律自体が成
立しないことは明ら
かです。

東京外環で作ったチラシを添付します。ぜひ、お読みください。

外環ネット
大塚康高

2018年7月25日水曜日

 ストップ !リニア訴訟愛知  学習会のご案内  

リニア「大深度地下トンネル使用」は財産権を侵害

   広範囲に及ぶ地下水の影響・地盤沈下など



 日時   2018年8月25日(土) 13時30分〜16時(開場13時00分
 会場   春日井総合福祉センター第三集会場
 資料代  500円
 講師   弁護士  樽井 直樹

  ※  2018年3月20日JR東海はリニア中央新幹線品川・名古屋間に係る大深度地
    下使用について国土交通大臣に認可申請を行いました。
    JR東海は路線上の土地所有者・住民に断りもなく工事を行います。
    春日井市坂下町では、住民の井戸がトンネル建設に邪魔になるとして撤去を営業
    を存続できるのか危ぶまれています。
    また亜炭坑の陥没、地盤沈下、井戸水の枯渇、上水道への影響など、実害が起き
    ても工事との因果関係を被害者側が立証することは極めて困難です。被害を受け
    るのは住民になります。
     大深度臨時調査会答申は「大深度地下は残された貴重な空間であって、一旦設
    置した施設の撤去が困難であるなどの特性を持っている」だけに、その利用は慎
    重に上に慎重であるべきである。と述べています。この学習会はリニア事業と大
    深度地下法の問題点を明らかにします。

2018年6月16日土曜日

リニア大深度地下説明会 参加者から怒りの声(2018年6月16日しんぶん赤旗)

JR東海・リニア大深度説明会 参加者から怒りの声

 JR東海は地下40㍍より深いところにリニア中央新幹線トンネルを建設するため、「大深度地下」の使用認可を国に申請しています。5月に開催された住民説明会では、参加者からさまざまな不安や疑問が続出。ルートなど住民に十分知らされておらず、「このままの認可は許されない」との声があがっています。
2018年6月16日しんぶん赤旗の記事です。
 大深度地下利用の対象は東京、神奈川、愛知各都県の約50・3㌖。うち愛知県内は約17㌔。使用申請は「大深度地下の公共的仕様に関する特別措置法」(大深度法)に基づいて行われます。認可されれば、地権者に工事の同意は不要になり、原則的に補償も用地買収もしないですみます。
 愛知県内では5回の住民説明会が開かれ、各地で住民への周知が不十分だとの声が毒出。「説明会の情報を開催初日の新聞報道で知った」「トンネル真上の住民が知らないままなのではないか」などの意見が相次ぎました。
 JR東海は自社ホームページや各自治体の広報、回覧で周知したと説明しますが、トンネル状への住民への個別の告知はしていません。
 「東京外かく環状道路の公示ではトンネル状の住民に1軒1軒ポスティングで資料を配布したと聞いている。最低限のことさえされていない」と春日井シニアを問う会の川本正彦さん(74)は語ります。「自分の家の下にトンネルがつくられることさえ知らされていない。このまま大深度地下の使用が認可されることは非常に問題がある」と訴えます。

■ 根拠は示せない

 トンネルによる家屋被害、地下への影響も質問が出されました。
 JR東海は、地上で地盤の変異を確認しながら強固な支持地盤の下をシールドマシーンで掘り進むので「地上に影響は起きない」「家屋調査はしない」と説明。
 「もしも家屋への被害があった場合の補償は」との質問に、被害の因果関係を確認できれば補償を協議すると回答。しかし、「JRが被害認定するということか? それでは因果関係が不明とされ、結局補償されないのではないか」との声には無言でした。
 地価が下がるのではとの質問には、「通常の土地利用に影響を与えない。地下の変動の補償は考えていない」との回答に終始。地下が下がらないとする根拠は示せませんでした。

■ 回答かみあわず

 ほかにも地下水への影響、騒音や振動、電磁波、避難方法、活断層、発生土など各地で多岐にわたる懸念や疑問が噴出。1時間半の予定時間を過ぎた会場もありました。質問と回答がかみあわず、「質問に答えていない」と怒りの声があがる場面もありました。
 大深度地下トンネルの真上に住む名古屋市北区の中西啓俊さん(36)は、「説明があいまいで分かりづらい部分があった。地表の変化を確認しながら掘るというが、何かあったら工事を辞めるのか。いつから工事が始まるのかもわからず不安」と話します。
 大深度法の前提は、「公共の利益となる事業」。安全性、採算性、自然環境破壊など問題が山積みのリニア事業が公共の利益となる事業といえるのか。
 リニアを問う愛知市民ネットの小林收さん(73)は、「JR東海は民間事業と言うことで契約内容などの情報公開も拒否している。公共の利益となる事業ならきちんと情報を明らかにすべきだが、説明会で聞いても答えない。このままの認可は許されない」と語ります。国交省は7月6、7両日、大深度地下申請について公聴会を開催する予定です。
(6月16日 しんぶん赤旗)

2018年6月16日しんぶん赤旗の記事です。

2018年5月30日水曜日

大林組、同業他社も驚いた「新ルール」の徹底ぶり(2018年5月30日東洋経済)

大林組、同業も驚いた「新ルール」の徹底ぶり

5/30(水) 8:00配信
「●●建設さん、あれ、どう思いますか……?」

ここ最近、建設業界の人間が集まると、そんな会話が交わされるという。
「あれ」とは、ゼネコン最大手の大林組が5月14日に発表した、「再発防止策の策定について」という文書だ。

■大林だけが社長も辞任に追い込まれた

 中身に触れる前に、文書を発するに至った経緯を振り返ろう。発端は2017年12月8日、大林組が東京地検特捜部の家宅捜索を受けたことにさかのぼる。JR東海が進めるリニア中央新幹線工事について、東京地検特捜部は名古屋市にある「名城非常口建設工事」を筆頭に複数の工事の入札で受注調整が行われたとし、偽計業務妨害(後に独占禁止法違反)の疑いで大林組のほか大成建設、鹿島、清水建設の大手ゼネコン4社を家宅捜索した。
 リニア建設工事への入札参加の可否などについて、土木工事の担当者間で情報交換を行ったことが、捜査関係者に目をつけられた。今年1月23日には当時の大林組社長である白石達氏が辞任を表明する事態にまで発展。そして3月23日、大林組らゼネコン4社は独禁法違反の罪で起訴された。

 真っ先に家宅捜索を受け、起訴された4社のうち唯一社長が辞任に追い込まれた大林組。談合事件でやり玉に挙げられた立場もあってか、同社が公表した再発防止策は他社から見ても「非常に厳しい」(ゼネコン幹部)ものとなった。
 独禁法順守の研修から内部通報の奨励、受注した工事の入札過程についての抜き打ち検査に至るまで、子細にわたる項目の中でも、ひときわ業界関係者の注目を集めたのは、同業者との付き合い方に関するルールだった。

 業界団体などが主催する公式行事以外は、同業者が参加する懇親会への参加を禁止。また同業者との会合を持つ場合は、事前に報告する義務を課す。それも工事の受注に直接携わる営業担当者だけでなく、設計や建設現場、果ては事務部門に至るまで全従業員を拘束するという徹底ぶりだ。
法令順守の姿勢を打ち出した同社だが、建設業界の中でその動きが現れたのは最近のことだ。

 「名刺はここにお入れください」――。今から10~15年ほど前まで、国土交通省や地方自治体の工事担当部署には、名刺箱が置かれていた。名刺を入れるのはゼネコンの営業担当者。お目当てはもちろん、役所が発注する工事を受注することだ。

 むろん、名刺の枚数、つまり役所に顔を出した回数だけで工事がもらえるわけではない。だが、「参考程度」に名刺の枚数が数えられることはあったという。
 指名競争入札を採用している公共工事では、行政機関は名簿に登録されているあまたのゼネコンから、工事の実績や会社の規模などを基準に、入札に参加する業者を指名する。指名されなければそもそも入札に参加できないため、ゼネコン側も自社を指名してもらおうと営業に奔走する。

■談合は行政側にも都合がよい

 ゼネコン側の利益ばかりが強調される談合事件だが、発注者側にもメリットがある。工事に誰も入札しなければ、価格設定や工期、仕様がまずかったということになり、担当者は責任を問われる。
 施行能力のない会社が落札してしまい品質問題が生じた場合も、担当者の責任問題に発展しかねない。実績のある業者による落札があらかじめ決まっていれば、そうした心配はなくなる。

 だが2000年代前半には数十~100社以上のゼネコンを巻き込んだ大規模な談合事件が多数発生し、さらに2005年には旧日本道路公団の元理事が鋼橋工事の談合を主導していたことも発覚した。

 2006年には課徴金額を引き上げた改正独禁法や公益通報者保護法が相次いで施行され、談合行為に対する世間の目はますます厳しさを増している。

 ゼネコンと行政機関の距離感に対する風当たりも強まり、自治体は次々と名刺箱を撤去。それどころか、ある都道府県庁の工事担当部署では「ここから先、工事関係者の立ち入りはご遠慮ください」という掲示までするようになった。

 以来、談合の摘発件数は緩やかな減少傾向にある。

 大林組の動きは、談合撲滅に向けた一歩として業界にどこまで波及するのか。同業他社からは「わが社は営業担当者のみにとどめている。全社員まで広げる必要はないのでは」「社員のプライバシーの問題にもかかわるので難しい」という消極的な声が目立つ。
ある中堅ゼネコンの幹部は「ゼネコンに就職したばっかりに、同業他社に就職した同級生と簡単に会えなくなってしまうのはいかがなものか」と漏らす。

■一筋縄ではいかない談合撲滅

 他社からは「従業員の拘束だけでは問題は解決しない」という声も上がる。公正取引委員会が5月、農林水産省OBを通じて入札情報を入手していたとして準大手ゼネコンのフジタに処分を下す方針を固めたのは、その一例だ。

 国土交通省を筆頭に、ゼネコン各社は工事発注者である行政機関のOBを社員に迎えている。彼らの役割は、入札したが落札できなかった工事について「添削」することだ。
 近年は入札金額だけでなく、工法や環境対策など各社の提案を多面的に評価して落札者を決める「総合評価方式」が主流だ。落札業者決定後、入札参加者に開示されるのは各項目に基づく点数のみで、なぜその点数になったのかは知らされない。「金額だけで決まる入札よりも、ある意味ブラックボックスになった」(準大手ゼネコン幹部)。

 そこでOBは古巣のつてを通じて点数の根拠を聞き出し、ゼネコンは次の受注に向けて提案を変えていく。工事の入札は終了しているため直接「談合」とは呼べないが、一歩間違えれば独禁法に抵触しかねない。
 「工法にも『はやりすたり』がある。今の役所がどんな工事を求めているのかを知るべく、最初から落札する気のない工事でも、入札に臨むことがある」(中堅ゼネコン役員)

 大林組の新ルールに対して及び腰な建設業界だが、法令順守に向けた包囲網は形成されつつある。公正取引委員会の杉本和行委員長は東洋経済の取材に対して「海外では担当者同士が会って話しただけでアウト。日本でも国際ルールにのっとって判断していく」と建設業界に対して牽制球を投げた。
 大林組が策定したルールも、世界的に見れば決して厳しすぎる内容ではない。それどころか、他社も同水準のルールを求められる可能性がある。

 どうすれば談合を防げるのか。建設業にとって古くて新しい問題に対し、大林組はさながら「性悪説」とも取れる形で、1つの回答を出した。

 空前の好景気に沸く業界だが、これを教訓とせず、一部の従業員による勇み足を許せば、途端に足をすくわれる。

東洋経済オンライン

2018年5月20日日曜日

リニアが壊す暮し 渦巻く不安置き去り 沿線7都県 声上げる住民(2018年5月18日しんぶん赤旗)

沿線7都県 声上げる住民

リニアが壊す暮らし 渦巻く不安置き去り

 JR東海が2027年品川―名古屋間の開業をめざすリニア中央新幹線計画。リニア工事をめぐる談合で大手ゼネコン4社が起訴される事態になっても、工事は止まることなく進められています。しかし、工事が進む沿線各地の現場ではさまざまな問題が噴出。住民が不安や怒りの声をあげています。沿線7都県の現場から告発します。(伊藤幸、細川豊史、山梨県・渡辺正好)

東京・神奈川 ルートすら知らせず

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 人口が密集する住宅地の下をルートが通る東京都と神奈川県でも、住民の間にリニア中央新幹線計画への不安が広がっています。
 「うちのすぐ裏を通ると知ってびっくりした」「私たちの力で食い止める展望はあるのか」。17日に大田区で日本共産党区議団が開いた「リニア新幹線を考えるつどい」では、住民からこうした声が上がりました。
 JR東海は今月10日から各地で大深度地下(40メートル以深)の住民説明会を開いていますが、自治体の広報誌などに掲載するだけです。ルート直上の各世帯には、説明会の予定はおろか、ルートの存在すら個別に知らされていないことが明らかになっています。
 このつどいで山添拓参院議員は、リニア計画の無謀さを説明。「こんな計画を住民に知らせずにやらせてはいけない。知らない人も知ればびっくりし、不安を持つ。大きな動きをつくっていこう」と呼びかけました。
写真
(写真)山添氏(正面)に質問する「つどい」参加者=17日、東京都大田区
 共産党都議団は9日に国土交通省に対し、自然・生活環境に悪影響を与えるリニア中央新幹線計画について、大深度地下使用の認可をしないことと、工事実施計画の認可取り消しを要請しました。
 神奈川県では、相模原市でリニア新駅建設のために県立高校が移転を迫られ、市内に50ヘクタールもの車両基地の建設が計画されています。
 同市の住民は2012年に「神奈川県のリニア新幹線を考える相模原連絡会」を結成し、用地買収を防いで自然環境を守るためのトラスト運動などに取り組んでいます。

山梨 用地補償は一部だけ

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(写真)住宅地が密集する沿線ルートの手前に反対の看板掲げる宮沢地区=17日、山梨県南アルプス市
 山梨県南アルプス市では、JR東海が示したリニア中央新幹線のルート図は市内を斜めに横断する計画となっています。主に七つの自治会が影響を受け、沿線住民から不安と怒りの声が出されています。
 住民から、高さ20メートルを超える高架が通る計画に、生活用水として使っている湧水の地下水が高架橋梁(きょうりょう)工事によって水枯れしないか懸念の声が起こっています。山梨県が発表した環境基準で住宅地の騒音を70デシベル以下としたことにも、「耐えられるレベルではない」と批判の声があがっています。
 さらにルート沿線地区では、四角い集落の真ん中を斜めに通るため、家の敷地を斜めに切られます。住民らは「勝手口や車庫の一部がかかってもそこだけしか補償されない、これでは住み続けられない」と訴えています。
 市内の戸田、宮沢地区の二つの自治会は3年前にリニア建設反対決議をあげ、事業説明会の開催を拒否し続けています。宮沢地区では意見書を添えた署名を95%の住民から集め、JR東海が用地交渉幅を22メートルとしていることに対し、用地補償幅を100メートルとすることなどを、毎年JR東海に要請しています。
 地権者会代表の石川義章さんは、「リニアは住民が望んだものではないし、JRのやり方は許せない。今の状況では絶対に前に進めない。要望が通るまで説明会はうけない」と話しています。

静岡 未着工 県と合意なく

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(写真)南アルプスを流れる大井川=静岡市葵区
 沿線7都県で唯一未着工なのが静岡県です。静岡市北部の南アルプスを貫くトンネル工事で大井川の大量の減水が予測され、対策をめぐりJR東海と利水者との間で合意の見通しがたっていません。
 全長約25キロの南アルプストンネルのうち、静岡工区は10・7キロ。このトンネルが大井川源流部を貫きます。JR東海は工事により大井川の流量が毎秒2トン減少すると試算し、「減った分を戻す」として導水路トンネルで下流に水を戻すことなどを計画しています。
 しかし全量は回復できないため、川勝平太知事や利水者は「湧水の全量を恒久的に確実に戻す」ことを要望。昨年の工事契約以降もJR東海と利水者との協定は締結されていません。
 大井川の水は発電や農業、工業、生活用水として下流域の生活を支えています。しかし流量は多くなく昨年も節水対策をしています。県の担当者は「水は県民にとって大事なもの。ひくことなく折衝したい。協定締結のない着工はないと信頼している」と語ります。水が戻らない上流部の生態系への影響も懸念されます。大量の発生土を大井川の川岸に積む計画による災害や環境破壊の危険などの問題も山積みです。
 「リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク」の林克共同代表(63)は、「大切な水と環境を守る立場で県が防波堤の役割を果たしている。世論を高めしっかり共同を広げていきたい」と話します。

長野 地滑り地帯 発破工事

 南アルプストンネル工事の長野県側坑口・大鹿村では現在、二つの非常口(作業用トンネル坑口)で火薬による発破掘削が進められています。
 「突然『ドーン』と雷のような音がして家が揺れた。体に響くような振動があった」
 3000メートル級の山々に抱かれた同村最奥の集落、釜沢地区の自治会長・谷口昇さん(48)は発破の衝撃を語ります。除山(のぞきやま)非常口で最初の発破があったのは昨年12月。発破後、谷口さん宅では雨もりが始まり、風呂場の床がひび割れました。その後自宅をふくめ2軒で石垣が崩れたといいます。被害を訴えましたが因果関係は認められていません。
 「もともとここはいろんな方向に地滑りを起こし崩れやすい。こんな場所でさらに振動を与える工事はやめてほしい。不安はピークです。何か起きるたびに『ここに生活しているんだ』と主張しなければいけない。まして声をあげられない動物や自然はどうなるのか」
 毎日発破が行われますが、掘りだした土の行き先は決まらず現在は仮置き状態です。大鹿村では約300万立方メートル、長野県全体では約970万立方メートルの土がでる計画ですが、JR東海によれば最終置き場として確保したのは3万立方メートルで他は協議中です。
 しかも置き場候補地は崩れやすい沢や谷ばかり。「三六災害」と呼ばれる大水害(1961年)の記憶から、豊丘村伴野地区の候補地では下流の小園(おぞの)地区の住民が反対の署名運動を起こし、計画を断念させました。
 大鹿村内も三六災害で氾濫した河川周辺などに置き場が計画されています。「大鹿の十年先を変える会」の宗像充さん(42)は、「将来にわたって安全が保てるのか。説明もなく決定を急ぐJRや村のやり方に住民の反発が起きている」と訴えます。

岐阜 ウラン鉱床掘る危険

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(写真)南垣外非常口から発生土を運ぶ巨大ベルトコンベヤー=4月9日、岐阜県瑞浪市
 岐阜県内は約55キロの区間中、現在2カ所の非常口(作業用トンネル掘削口)で工事が行われています。東濃地域ではウラン鉱床が点在する地帯を掘ることに住民が不安を抱えています。
 瑞浪(みずなみ)市の日吉トンネル南垣外(みなみがいと)工区では、非常口から本坑につながる斜坑の掘削が進んでいます。発生土を運び出す巨大ベルトコンベヤーが稼働し、住民によると5月から発破掘削も試験的に始まりました。山に囲まれた静かな暮らしを振動や騒音が襲います。
 さらにこの先ウラン鉱床が点在する地帯を掘る計画です。ウランが掘りだされれば、肺がんなど健康被害を起こすラドンが空中に放出される危険があります。
 JR東海は、ウラン鉱床を避けて通ると説明し、ウランを掘りだした場合の最終処分方法や処分地は示していません。
 ところが沿線の住民団体などの放射線量調査では、品川から245キロのリニアルート真上で、周辺のウラン鉱床地帯よりも高い数値が毎回出ています。
 線量調査をしてきた「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表(69)は「住民や作業員の命や健康に関わる問題。ウランが出たときの処分先も決めないまま掘削を急ぐのはあまりに危険。掘削を急ぐべきではない」と語ります。

愛知 住民に立ち退き迫る

 愛知県の名古屋駅周辺では、住民が立ち退きや「区分地上権」の契約設定を迫られています。
 JR東海は名古屋駅の東西約1キロにわたって開削工事を行い、地下30メートルに新駅を建設する計画です。立ち退き対象の地権者は約120人。JR東海の委託をうけ名古屋市の外郭団体「名古屋まちづくり公社」が用地買収にあたっています。
 中村区の女性(80)も立ち退きを迫られている一人。公社の人がたびたび訪ねてきますが、「この年で新しい土地を探すなんてできない」と拒んでいます。「近所の人も出ていきなさって、さみしい。先祖代々の土地で静かに暮らしていたのに、リニアなんて来なければよかった。死ぬまでここにいたい…」
 公社は「もうみんな契約をもらっている」と迫ってくると言いますが、JR東海によると西側で約3割の取得、東側は協議中です。
 地下40メートルより浅いトンネル区域では区分地上権の設定が必要となり、地権者約560人との本格的な契約はこれから。土地利用に制限がかかり、周辺地域への影響が懸念されるため不安を訴える住民も。
 「中村・リニアを考える会」の鳥居勝事務局長(70)は「国家的プロジェクトを語って強引に用地収用を迫ることは許されない。住民に損害を与えることがないよう対応を求めたい」と語ります。
 地下40メートルより深いトンネル区域ではJRが国に大深度地下使用を申請中。許可されれば土地買収の必要がなくなります。説明会では住民から疑問や不安が続出しました。
 リニア中央新幹線計画 超電導で浮上するリニアモーター車両で、東京―大阪間を時速500キロで走る総事業費約9兆円の巨大事業。建設主体はJR東海で、2027年品川―名古屋間の先行開業、45年に大阪までの開通をめざしていました。14年に国の事業実施認可を受けて着工。安倍政権が国家的プロジェクトと位置付け16年には、名古屋―大阪間を最大8年前倒しするという理由で公的資金(財政投融資)3兆円が投入されました。品川―名古屋間約286キロメートルの約86%がトンネル。環境破壊、安全性、採算性など多岐にわたる問題が指摘されています。16年には工事実施計画認可の取り消しを国に求め沿線の738人が東京地裁に提訴し、現在係争中です。

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2018年3月3日土曜日

リニア談合逮捕 どこまで続く悪弊か(2018年3月3日中日新聞)

リニア談合逮捕 どこまで続く悪弊か 

2018/3/3 紙面から
 リニア中央新幹線工事を巡る談合事件で、大手ゼネコン元幹部らが東京地検に逮捕された。相変わらずの談合体質が明るみに出た印象だ。決別宣言は嘘(うそ)だったのか。徹底的な捜査を望むしかない。
 南アルプスを貫くリニア中央新幹線は当初から巨額な費用と難工事が予想された。JR東海は二〇二七年の品川-名古屋間の開業を目指している。
 総工費は実に九兆円超で、そのうち三兆円は国から財政投融資の形で支援を受ける。まさに「国家プロジェクト」でもある。
 談合の疑いは、大手ゼネコンの大林組、鹿島、大成建設、清水建設の四社。関係者によると、四社の元幹部らは、国が着工を認可した一四年から一五年に受注調整することで合意。JR東海側から工事情報を入手し、情報交換を通じて落札する企業を決めていたとされる。
 とくにリニア関連工事のうち、品川駅や名古屋駅の新設工事について、会合を開くなどして、入札で競合しないよう受注調整していた疑いがあるといわれる。
 東京地検は昨年十二月の家宅捜索以降、担当者の事情聴取を重ね、公正な競争を妨げる独占禁止法違反に当たると判断した。いわゆる「不当な取引制限」に該当するとし、逮捕に踏み切った。
 大林組と清水建設は容疑を認め、課徴金減免制度に基づき公正取引委員会に違反の自主申告をした。違反を自ら申告すれば、課徴金の減免と刑事告発をも免れうる制度である。
 一方、鹿島と大成建設は「受注調整はしていない」と争う姿勢だ。逮捕されたのは、この二社の元幹部らだ。減免制度を考慮した関係かもしれない。それでも外見上は「見せしめ」のようにも映る。発表内容だけでは、違反の理由が明確には分からないからだ。だから、東京地検は否認するゼネコン側を証拠により、どう切り崩せるかが課題となる。
 それにしても戦後日本は「土建国家」の異名で呼ばれ、談合は必要悪という人もいたほどだ。しかし、談合でつり上がる建設費は結局は税金で賄われる。
 だから、談合事件がどんどん摘発され、〇五年に業界が「談合決別宣言」をするに至ったのだ。
 震災復興や東京五輪などの特需に建設業界は沸く。ひょっとすれば、決別宣言などとうに忘れ、土建国家時代の悪弊が蘇(よみがえ)ってはいないか。リニア談合事件は氷山の一角なのかもしれない。

2018年3月1日木曜日

トンネル競合を調整か リニア談合、清水建設に代替工事

トンネル競合を調整か リニア談合、清水建設に代替工事 

2018/3/1 朝刊
 リニア中央新幹線工事を巡る入札談合事件で、大手ゼネコン大林組(東京)、鹿島(同)、大成建設(同)の三社と、清水建設(同)との間で、品川駅の新設工事と南アルプストンネルの工事を分け合っていた疑いのあることが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、法人としての四社と担当者らを立件する方針を固めたもようだ。
 関係者によると、特捜部は二十八日、大成建設の元常務執行役員らに対し、本格的な聴取を行った。
 工事を発注したJR東海によると、品川駅は北工区が、清水建設を中心とする共同企業体(JV)が二〇一五年九月に、南工区は同年十月に大林組のJVがそれぞれ受注。入札はいずれもJR東海が事前に業者を選定した上で、施工方法や価格を総合評価する指名競争見積もり方式で行われた。
 ゼネコン関係者によると、南アルプストンネル山梨工区の工事への参加を希望していた清水建設が、大成建設と競合。途中で工事が分割された品川駅の一部を清水建設が受注する代わりに、南アルプストンネルを断念するよう担当者間で話し合ったという。結果的に南アルプストンネルは、大成建設が山梨、静岡工区を、鹿島が長野工区を受注した。
 特捜部などは昨年十二月の家宅捜索以降、担当者などから聴取を重ねた結果、これらの行為が公正な競争を妨げた疑いがあると判断したもようだ。
 四社は発注前に情報交換をしていたことを認めている。大林組と清水建設は容疑を認めて課徴金減免制度に基づき、公正取引委員会に対して違反を自主申告した。一方、鹿島と大成建設は「受注調整はしていない」と争う姿勢を示しているという。
 昨年十二月までに、JR東海は二十四件の工事を契約し、うち四社がそれぞれ中心のJVが十五件を受注。各社三~四件とほぼ均等に受注していた。
 JR東海は二七年の品川-名古屋間のリニア開業を目指している。総工費九兆円超のプロジェクト。大阪までの全線開通の前倒しを前提に、三兆円の財政投融資が投入され、国から支援を受けている。

2018年2月17日土曜日

岐阜の東海環状線トンネル予定地からヒ素 残土埋め立て撤回(2018年2月15日中日新聞)

岐阜の東海環状道トンネル予定地からヒ素 残土埋め立て撤回

 岐阜県山県市と岐阜市を結ぶ東海環状自動車道のトンネル建設予定地の地質調査で、環境基準値を超えるヒ素が検出されていたことが、国土交通省岐阜国道事務所などへの取材で分かった。同事務所は、毒性があるヒ素の検出を公表していなかった。トンネル掘削で出た土を山県市内の運動場に埋める計画を進めていたが、地元自治会の反発を受けて断念した。
 岐阜事務所などによると、現場は高富インターチェンジ(IC、仮称)と岐阜IC(仮称)をつなぐ岐阜山県第1トンネル予定地(約5キロ)。2011年度と13年度に計9カ所の岩盤をボーリング調査し、うち3カ所の試料から、土壌汚染対策法が定める土壌溶出量の基準値(1リットル当たり0・01ミリグラム)の最大10倍程度のヒ素が検出された。岐阜事務所によると、自然由来のヒ素とみられ、人体に直ちに影響が出る量ではないという。
 岐阜事務所はヒ素を含む掘削土(最大約5万立方メートル)を、山県市田栗の美山(みやま)総合運動場のグラウンドの地下に、遮水シートなどで包んで埋める計画を昨春から検討。今夏の作業開始を目指し、1月下旬に地元自治会への説明を開始。この中で、土にヒ素が含まれることを初めて明かした。
 だが住民らは「土砂に含まれたヒ素が雨水などで、高台の運動場から集落側に漏れ出ないか」などと反発。自治会が岐阜事務所に受け入れ拒否を伝えた。岐阜事務所は今後、別の埋め立て地を探す。
 東海環状道の工事を巡っては16年3月にも、高富IC施工に向けた周辺のボーリング調査で、土壌溶出量の基準値を超すヒ素やセレンが検出され、この時は岐阜事務所が報道発表していた。県の要綱では事業者に、土壌汚染などの情報を報告するよう定めている。
 岐阜事務所は「周辺に住宅地や井戸がなく、影響はないと考えたため、公表しなかった。(トンネル建設予定地は)調べたのが土壌ではなく『岩盤』なので、県に報告しなかった」と説明している。
(中日新聞)

2018年2月16日金曜日

2018年2月2日金曜日

特捜部、鹿島と大成を再捜索 リニア談合事件(2018年2月2日中日新聞)

特捜部、鹿島と大成を再捜索 リニア談合事件 2018/2/2中日新聞 

 リニア中央新幹線工事を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部は1日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、大手ゼネコン鹿島の本社(東京)と大成建設の本社(同)を家宅捜索した。両社への家宅捜索は昨年12月にも実施。受注調整を否認しているとみられ、特捜部は全容解明には再度の強制捜査が必要と判断したもようだ。
 鹿島広報室と大成建設広報室は取材に「捜査中なので回答は差し控える」とコメントした。
 特捜部などは昨年12月、2社のほか大林組(同)と清水建設(同)を家宅捜索した。関係者によると、特捜部は、4社が発注前に工事に関する情報を交換し、事前に落札予定社を決めるなど受注調整を行っていたとみて調べている。

2018年1月25日木曜日