2015年1月25日日曜日

リニアに関する可児市民の意見(公聴会での公述)その6

(6)公述人F氏(可児市)

リニアが大萱地区を約 1.2 キロメートルにわたり高架上を走行することについて、文化面 と環境面から述べさせていただきます。
大萱には桃山時代に作られた牟田洞窯、窯下窯などの古窯群跡があります。そこでは日本 で初めて白い薬に絵のある陶器が焼かれ、その代表的なものが今日国宝となっている志野の 茶碗の「卯花墻」です。この茶碗の素晴らしさは、􏰀形的に技のかけ方、焼き方全てにおい て優れています。どのような作り手だったのか、どんなふうにこんな面白い物を作ったのか、 想像力をかき立てられます。窯下窯では、黄瀬戸や瀬戸黒の名品が焼かれたことが陶片によ って証明されています。その志野や黄瀬戸の描かれた大らかな筆使いの山々や草木、鳥獣は そのまま大萱の自然であります。その自然が当時と変わらぬ姿で存在していることに、私た ちは桃山の陶工の眼差しを感じ、表現の仕方を考えたりします。鑑賞者としましても志野に 描かれた愛らしい鳥は、桃山の陶工の近くで鳴いていたかもしれないと想像できて楽しめま す。
    その大切な想像をかき立ててくれる大萱の風景が、リニアの高架によって分断されること
   は、歴史的、文化的背景の損失になります。桃山の焼き物に感動された方が、そのものがど
   のような所で生まれたのか知りたくて大萱に訪ねてこられたとき、その風景が分断されてい
   たらどんなに失望されるかと思います。桃山文化の伝承のため発祥の地のため、風景を壊さ
ないでください。この考えは、JRのリニアと山里の風景の対比が良いとする見解と相反するものです。何とぞご考慮をお願いいたします。
また、自然環境面について、11 月にJR東海が作成された、環境影響評価準備書に対する 意見の概要及び事業者の見解の中の鳥類に絞って意見を述べさせていただきます。事業者の 見解として、「1、繁殖環境への影響は特に大きいものではない。2、消失する環境に類似し た環境に代替巣を設置する。3、徐々に工事に伴う騒音に慣れさせる。」という言葉が並んで いますが、今日までこの里山の環境を守り続けるために努力を重ね、ときには声を上げてき た大萱にとりましては、それらの言葉は机上の空論にしか受け取れません。「1、リニアの高 架上に営巣地がなければ特に影響はない。」と書かれていますが、繁殖環境への配慮に欠くも のです。リニアの走行によって餌をとる場所が狭められれば雛は育ちません。特に大萱地区 は、ゴルフ場に囲まれているとはいえ、雑木の山が残っているところであり野鳥の餌場です。 年間 50 種以上の野鳥を見かけます。また、大萱の山は春の芽吹き、秋の紅葉を見てもわかる ように、色々な色の芽吹き、色々な色の紅葉が見られます。これはそれだけ草木の種類が豊 富ということです。日本の南限、北限の植物に加え、太平洋側、日本海側の植物があると知 られています。種類が多いということは、それだけ多くの花が咲き、鳥や虫の蜜源になり、 また果実が付けば鳥獣の餌になります。2の「代替巣」の件ですが、どれほど成功例がある のでしょうか。ヤマガラやシジュウカラが巣箱に入りますが、それに入らない鳥もいます。 都会に馴染んでいる猛禽類もいるようですが、それは代替巣とは違います。住処を奪われる ことは大変なことと思います。小手先のことより環境を守っていただきたいと思います。3 の「徐々に工事に伴う騒音に慣れさせる。」という表現には一方的な見解を感じます。縄張り が重なったり、環境が異なれば、結局個体数は減るのではないでしょうか。
今まで野鳥の弁を話してきましたが、段々とJRの見解書を読んでいるうちに、これは大 萱住民に対しても同じことを言っているのではないかという気がしてきました。先にも述べ ましたが、大萱住民は事ある毎に環境を守る努力を重ねてきました。規定の範囲内という判 断の上でも川は徐々に汚れ、魚は減ってきました。少しぐらいなら良いだろう、代わりにこ うすればよいと思うほど、自然は強くないような気がします。何故なら、鳥や虫たちは今の 環境を精一杯生きているので、急な変化には付いてはいけないのではないでしょうか。こう いう現実を知っている住民は、徐々に慣れさせるという急な変化に恐ろしさを感じますので、 JRの見解の甘さは放っておけません。あの鳥がいなくなったと嘆いても遅いのです。今度 また国レベルの工事が始まれば、この土地はかつてないほどの損害を受けます。何とぞこの ことをご理解ください。以上です。 

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