2017年12月21日木曜日

ゼネコンなれ合い ツケは国民 談合リニア 住民。怒りと不安(しんぶん赤旗2017年12月21日)

2017年12月21日(木)

ゼネコンなれ合い ツケは国民

談合リニア 住民、怒りと不安

名古屋で聞く


 安倍晋三政権とJR東海が強行するリニア中央新幹線の建設工事。総事業費が9兆円以上の巨大国家プロジェクトをめぐる不正入札事件が大手ゼネコン4社にまで広がりました。住民からは不正への怒りとともに建設工事による生活環境破壊への不安が広がっています。(原千拓)

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(写真)大林JVが不正入札で受注した疑いがもたれているリニアの名城非常口新設工事=名古屋市
「大手ゼネコン各社がなれ合いでリニア工事を分け合っているとしか思えません」。名古屋市のリニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)は、そう指摘します。
 リニア中央新幹線は時速500キロ超で走り、2027年に東京―名古屋、45年に大阪まで延伸し1時間余りで結ぶ予定。JR東海が事業主体で、安倍政権は16年に「大阪延伸の最大8年前倒し」を理由に3兆円の財政投融資を決めるなど国家的プロジェクトに位置付けています。
 東京地検特捜部は、大手ゼネコンの大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設が入札をめぐり談合した独占禁止法違反の疑いで、強制捜査にのりだしています。
 背景にJR東海が、同社が直接発注した入札の契約金額などを非公開にしており、住民らがチェックできない状況があります。
 小川さんは「リニアの工事費は財政投融資という形で公金が投入されています。リニアがうまくいかなければ、国民につけがまわってくる仕組みです。ますますJR東海によるリニア工事は許せません」と訴えます。
 JR東海は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、沿線自治体に用地取得の業務を肩代わりさせています。名古屋市では、名古屋新駅を建設するため、市の外郭団体「名古屋まちづくり公社」に市職員やOBを派遣し、地権者に用地売却を強引に迫っています。
 中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)はJR東海の対応について、こう批判します。「ある時は民間事業だといって必要な情報を示しません。またある時は公共事業という名目で立ち退きを迫ります。JR東海側の都合で使い分けをしています」

リニア建設 JR東海強引対応

用地取得ごり押し 住民「家出るの嫌」

JR東海は、地下30メートルの場所に名古屋新駅の建設をすすめています。南北に走るJR名古屋駅の新幹線などの線路と交差する形となり、東西約1キロメートルの区域内で用地取得が必要です。地権者は680人とされます。
 立ち退きの対象になっている名古屋市中村区に娘の家族と住む鈴木多づ子さん(80)はこう訴えます。「先祖代々からこの土地で住んできました。この年で新しい土地に住むのは大変だし、ご先祖様に申しわけないです。この家がなくなるのはとてもつらい。家を出るのは嫌です」
中村・リニアを考える会事務局長の鳥居勝さん(69)は「立ち退きは拒否できますが、周辺の家が契約に応じる中で、早く契約しろと追いつめられれば住民にとっては精神的苦痛になります」と指摘します。

「国家」の名で

JR東海側は国土交通省の認可を受け、リニアを「国家プロジェクト」としてすすめています。名古屋市の「名古屋まちづくり公社」はJR東海から用地取得を請け負い、市職員も派遣されています。鳥居さんは「行政側が用地取得に来ると住民はむげに断れないのが現状です」と話します。
 リニアは東京、名古屋など大都市部でも、地下40メートル以深の大深度地下トンネルを走行します。40メートル以深は、地権者への事前補償が原則として不要とされています。
 名古屋市の中村区と西区の一部では、トンネルから名古屋新駅にかけて地下40メートルより浅い区域です。地上の建物の立ち退きはありませんが、敷地が地下トンネルにかかる「区分地上権」設定の対象となります。
 鳥居さんは「区分地上権が設定されると土地利用に制限がかかったり、周辺地域にも影響がでます。にもかかわらず、JR東海側は、『トンネルにかかる面積の範囲のみの補償しかしない』『ビルの土台などのくいがトンネルに重なれば削る』『建物の荷重制限などにより建物の補償は一部だけ』などJR側の都合だけで条件を提示してくる」と怒ります。

説明あやふや

リニアを考える西区の会代表の小川輝夫さん(70)によると区分地上権の地域にかかる高層マンションなどでは、説明会は開かれたものの住民に対する補償が具体的に示されていないといいます。
 JR東海はトンネルの影響による事故が起こったときの補償については「基準にしたがって戸別ごとに対応する」と説明するだけで実際どこまで補償するかはわからないと鳥居さんは指摘します。
 JR東海は「丁寧な説明で理解を求める」としていますが、説明会ではマスコミはすべてシャットアウトで、用地についての説明会では参加は地権者のみ。周辺住民への説明会では発言は1人3問までで再質問はなしと厳しい条件を設定しているといいます。
 鳥居さんは「地権者の意向にそった補償をするならまだしも非常に傲慢(ごうまん)なやり方です。生存権の侵害でもあります」と話します。
 小川さんは、指摘します。「工事で出る残土の運搬やそれにともなう騒音や環境汚染など地権者の問題だけでなく、周辺地域にも影響が出ます。リニア開発の問題点をもっと広めなければなりません」

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