リニア揺れるゼネコン 不正受注、大林組の申告に疑心
2017/12/25 中日新聞
リニア中央新幹線を巡る事件は、わずか十日で名古屋市の一工事の不正入札容疑から、計画全体を舞台にした談合容疑へと急展開した。関与が疑われているのは、日本のインフラ整備を担うスーパーゼネコン四社。全容解明を進める東京地検特捜部と公正取引委員会に、大林組は既に“降伏”。「他に認めるところはないのか」。業界に疑心暗鬼が渦巻いている。
■矛先
「絶対に許せない。うちは最後まで闘う」。ある大手ゼネコン幹部は憤まんやる方ない様子で談合を否定した。怒りの矛先は大林組だ。
関係者によると、大林組は今月八、九日に名古屋市の非常口新設工事を巡る偽計業務妨害容疑で家宅捜索を受けた後、リニア工事での不正な受注調整を認め、課徴金減免制度に基づき公取委に違反を自主申告した。
この捜索以前に特捜部は、大林組社員から役員のメモや受注予定を記した一覧表を入手。一覧表は、大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手四社を示すとみられる「O、K、S、T」のアルファベットが書かれた生々しい内容だった。
特捜部と公取委は十八、十九日、今度は独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで大手四社を捜索。着々と外堀が埋められているが、自主申告した大林組は公取委の刑事告発を免れる可能性がある。
日本建設業連合会(会長・山内隆司大成建設会長)の二十二日の理事会には、大手四社のうち大林組首脳は姿を見せなかった。理事会後の記者会見で山内会長は陳謝する一方、事件や大林組についてのコメントを避けた。
「他に申告した会社があるのでは」「次はどこが」。大手ゼネコンの足並みの“乱れ”を受け、業界に波紋が広がる。
■けん制
特捜部が入手し、捜査の端緒になった一覧表。その評価は業界内で分かれる。前出の大手ゼネコン幹部は「社内説明用の資料を作っていただけではないか」とみる。
逆に「一覧が見つかると言い逃れできない」と話すのは、リニア工事を受注した共同企業体(JV)に参加している中堅ゼネコンの元幹部。ただ、特捜部が描く談合の構図には否定的だ。
「各社がどこの工事を狙っているのか、けん制しながら探り合うのは普通に行われている情報収集。それを談合と言われるとつらい」
業界の狭さを指摘する声も。特捜部の聴取を受けている大林組副社長や、大手四社と発注者のJR東海をつなぐ窓口役だったとみられる大成建設元役員は、東京都内の私立大土木工学科の同期生。同期には他にも大手から中堅までゼネコン入社組が名を連ね、結び付きの深さを想像させる。
一方で、JR東海側でも、担当者が工事に関する非公開情報をゼネコン側に伝えた疑いが浮上している。民間発注工事の談合という異例の捜査に、幹部の一人は「おかしな入札方法ではなかったと思う。リニア以外の工事でも同じようにやってきて、談合なんて言われたことはなかったのに…」と戸惑いを隠さない。
ある検察幹部は「工事費がもっと低ければ、利用者はJR東海からより良いサービスを受けられたかもしれない。自由競争とは何かを考えれば、放置できない」と捜査の意義を強調した。
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