2016年3月30日水曜日

「岐阜県知事意見とJR評価書の対比検証」(案)について

リニア岐阜県民ネットワークの原重雄さんから送られてきました。ご意見があれば3月中に出して下さい。下記の案は今月(3月)中にストップリニア訴訟事務局に提出されるそです。



【岐阜県知事意見とJR評価書の対比検証】(案)
「リニアを考える岐阜県民ネットワーク」
 2011年5月27日に国交大臣からJR東海に対して「建設・営業指示」が出され、その約10日後の6月7日には膨大な「計画段階配慮書」が公表されました。この手際の良さは、あらかじめ一連の手続きが分かっていたとしか考えられません。
 そして3か月後の9月には「環境影響評価方法書」(以後単に方法書)が公表されました。翌年3月には、方法書に対する、都県知事の意見が出そろい、2012年4月頃から、方法書で公表された286キロで3キロ幅の環境影響調査が始まりました。そして僅か1年数か月で調査が終わり、2013年9月には「環境影響評価準備書」(以後単に準備書)が公表されました。これでは真面な調査ができるはずもなく、文献調査が主体でボーリング調査や河川・井戸の水文調査はほとんど行われていません。
 準備書の公表以降、各地で説明会が開催されましたが、限られた時間の中で、JR側の説明が長く質疑応答時間は限られ、1人3問まで、再質問は認めない、しかも都合の悪い質問には答えず、問題点を煮詰めることはできず納得できないままに終わりました。最初から最後まで挙手しても1度も指名されないことも多く、予定時間が来れば閉会となりました。
 2014年1月に、可児市、多治見市、中津川市で準備書に対する公聴会が開催され、公述人の陳述はほとんどが反対意見でありました。また準備書に対する、関係市町と岐阜県の環境影響審査会等が開催され多くの問題点が出されました。
そして、各都県知事と関係市町村は2014年3月25日までに、審査書と首長意見書をJR東海に提出しました。これを受けてJR東海は知事意見から僅か1カ月足らずしか経たない4月23日、環境影響評価書(以後単に評価書)を作成し、国土交通大臣と環境大臣に提出しました。
評価書は知事意見に対し、JR東海の評価書本編、見解書、資料編の中で、準備書の内容を補充する形で環境保全措置を部分的に記載していますが、市長や町長意見のほとんどに対応していません。結果として、評価書の内容は準備書の手直し程度に過ぎず、知事意見から僅か1か月足らずで評価書がつくられた経緯から見ても、基本的に準備書の内容を踏襲したものと判断せざるを得ません。

第1 総括的な事項について
1 環境影響評価に取り組む基本的な姿勢
◇知事意見
 評価書の作成、環境保全措置や事後調査等の計画の具体化にあたって、専門家から指導及び助言を受けた場合については、その内容、専門家の氏名等を評価書に記載するとともに、県及び関係市町に報告すること。
◆事業者見解
 「助言した専門家個人が特定された場合、多くの意見が個人に集中し対応不能となるといった事態も想定されるため、過去の判例も考慮し、これらの情報によって専門家個人が特定されることのないよう配慮が必要である。」と考えていることから、記載しておりません。
<検証>
 知事の意見を否定しています。
◇知事意見 評価書や地元説明資料の作成に当たっては、地域住民等に容易に理解されるよう、わかりやすく述するとともに、積極的な情報公開に努めること。
◆事業者見解
 評価書の作成に当たっては、事業の実施が地域の環境に与える影響の程度や範囲をわかりやすくするため、調査、予測方法の記載や、図表等を活用した予測結果の記載など、より分かりやすい図書となるよう努めました。
<検証>
 地元説明会においては限られた時間の設定で、「1人3問まで、再質問は認めない」という事で回答に納得できなくても泣き寝入りとなり、都合の悪い質問には答えないこともありました。
 環境保全事務所へ書面にて申し入れをしても、ほとんどの場合口頭にての返答であり、不親切極まりなく、積極的な情報公開に努めているとは言えません。

2 事後調査及びモニタリングの計画
◇知事意見
「工事中及び供用後において実施する事後調査及びモニタリングの計画に関しては、遅くとも工事計画策定までに作成して、県及び関係市町に報告するとともに、工事説明会等において地域住民に説明すること。」
◆事業者見解
「工事中の事後調査及びモニタリングの具体的な計画については、工事の着手までに県及び関係市町に報告するとともに、工事説明会等において地元の方々にご説明してまいります。」
<検証>
 「遅くとも工事計画策定までに作成して」という意見に対して「工事の着手までに」となっており何を工事説明会等で説明するのか分からない。

3 本意見に基づく県等の対応
◇知事意見
「(1)本意見書に基づいて県及び市町に報告を行う際は、十分に時間的な余裕をもって行うこと。」
◆事業者見解
「岐阜県知事の意見に基づいて県及び市町に報告等を行う際は、できる限り早い段階で、県及び関係市町と調整のうえ、適切に対応してまいります。」
<検証>
 「できる限り」とか「適切に対応」という曖昧な表現であり、後で言い訳のできる表現であり、不真面目な表現である。

第2 工事計画について
1 施設の概要
◇知事意見
「(1)準備書において鉄道施設の概要が記載されているが、環境影響評価を行うために十分な情報が明らかにされていないので、評価書においては、特に次の事項について詳細に記述すること。」
「ア 駅、車両基地、非常口(換気施設を含む)及び変電施設の構造、設備及び機能等」
「イ 線路の詳細な縦断面図、斜坑のルート及び断面図」
◆事業者見解
「線路の詳細な縦断面図については、資料編に参考として記載しました。また、非常口と本線の接続トンネル(斜坑)のルート及び掘削方向を資料編に追記するとともに、トンネルの断面規模、施工方法及び構造については、第3章に追記しました。」
<検証>
 評価書においても、駅、車両基地、非常口、変電施設等の設備は準備書とほとんど変わりなく大雑把なイメージ図であり、線路の縦断面図も準備書と同じであります。斜坑のルートは線で示され距離が明らかになっているだけであります。知事意見に全く答えていない。
◇知事意見
「(2)次の鉄道施設の具体化に当たっては、例えば高架橋について防音・防災フードの施工を望む等、市町によって様々な意見があることから、現地の状況に応じ、それぞれの周辺環境、土地利用状況及び関係市町の意見を踏まえること。」
「ア 高架橋・橋梁の環境対策工(防音壁、防音防災フード)」
「イ トンネル部の土被り及び緩衝工」
「ウ 駅、車両基地、非常口(換気施設を含む)及び変電設備の位置及び設備・構造物の配置」
◆事業者見解
「新幹線の騒音対策は、防音壁などの音源対策のほか、土地利用対策や個別の家屋対策などの総合的な対策により推進することとされており、当社はこの考え方に則って、基準との整合性を図ってまいります。防音壁及び防音防災フードの具体的な設置範囲及び個別の家屋対策の進め方については、県及び関係市町と協議してまいります。」
<検証>
 知事意見では「関係市町の意見を踏まえること。」となっています。恵那市長意見では、恵那市大井地区の防音壁区間を防音防災フード区間に変更するように要望が出されています。また可児市久々利地区の地上区間をトンネル区間とするように要望が出されていますが、いずれも受け入れず当初計画通りとなっています。
 「土地利用対策」とは自治体に対策を求めているのであります。「個別の家屋対策」とは音源対策を行わず、家屋に防音のための「2重窓」などの防音対策を施すことであり、これでは環境対策ではありません。

2 工事方法
◇知事意見
「(1)工事車両の走行については、・・・・あらかじめ関係市町および道路管理者等の関係機関と協議の上で適切な走行ルートを設定すること。」
◆事業者見解
「工事の着手にあたっては、工事の方法や工事車両の種類等を明らかにし、・・・・工事説明会等において、地元の方々にご説明してまいります。」
<検証>
 知事意見では、本来評価書に記載を求めている。しかし残土置き場が定まっていないので、「工事着手にあたって」となっており問題を先送りしている。

第3 個別の環境要素に係る事項について
1 大気質
◇知事意見
「準備書においては、たいきしつの予測について平均的なデータを使用しているため、大気が滞留しやすい狭隘な谷間地形等の影響、工事車両の走行に伴う道路の高低差等の局所的な影響、短期的な変動影響等が考慮されておらず、影響評価が十分にできていない点がある。」
◆事業者見解
「建設機械の稼働に係る二酸化炭素及び浮遊粒子状物質の予測にあたっては、第8章に記載のとおり、予測地点近傍の現地気象観測結果にもとづき予測条件(風向・風速・大気安定度)を設定していることや、拡散方向の地表の標高の変化を考慮したモデルを採用していることから、地形の影響にはある程度反映できると考えています。」・・・・「今回採用した予測方法で十分な制度を持っているものと考えます。」
<検証>
 「影響評価が十分にできていない点がある。」と指摘しているのに「今回採用した予測方法で十分な精度を持っているものと考えます。」と知事意見を否定しています。
 「現地調査期間」が「四季」となっていますが、3月31日から8月21日の4か月と22日のブランクがあります。これで四季と言えるのでしょうか。

2 騒音、振動、微気圧波、低周波音
◇知事意見
「(1)工事ヤード内での建設機械の稼働による建設作業騒音について、それぞれの最大値を予測した場合の想定配置を評価書に記述すること。」
「また、準備書には環境保全措置として仮囲いや防音シート等の遮音効果が記載されているが、遮音による具体的な低減効果について評価書に記述すること。」
◆事業者見解
「発生源は建設機械の回転半径等を考慮して工事範囲境界から5m地点に設定し、断面予測を行いました。また、車両基地等における予測は、広範囲な工事となるため、・・・建設機械1ユニットあたりの施工範囲を概ね25m×25mと想定して工事範囲境界付近に発生源を面的に配置し、予測を行いました。」
「防音シートによる低減効果については、予測において考慮していませんが、実際の工事において設置することにより、更なる騒音の低減が図られます。」
<検証>
知事意見で求めている「最大値を予測した場合の想定配置」と「防音シートの具体的な低減効果」は記述されていません。
◇知事意見
「(2)工事用車両の走行に係る道路騒音については、工事用車両の走行による寄与分が約5デシベルと大きい場合や既存道路の現況が環境基準を超過している場合があるので、特に該当する箇所においては、工事の平準化を確実に実施し、騒音の一層の低減を図ること。」
◆事業者見解
「資材及び機械の運搬に用いる車両の運行に係る騒音の発生を低減するため、環境保全措置として、同車両の運行ルートの分散や、法定速度の遵守等を実施します。」
<検証>
 「車両の運行ルートの分散」となっていますが、残土捨て場も明らかになっていない中で、具体性がなく、田舎の道路は限られており分散ができるのか。「法定速度の遵守」は当たり前のことである。
◇知事意見
「(3)列車の走行による騒音の予測結果の妥当性を検証できるように、準備書における予測等のために参照した山梨実験線における音源パワーレベルや周波数特性の測定方法及び結果を評価書に記述すること。」
◆事業者見解
「周波数毎の音響パワーレベルについては、車両の先頭形状等の車両開発に関わるデータであり、開示は控えさせていただきます。」
<検証>
 知事意見を否定しています。積極的な情報公開とはかけ離れています。
◇知事意見主旨
「(6)列車走行に係る微気圧波・・・換気施設の低周波音については対策の実効性を確認するために、供用後においてモニタリングを実施すること。」

◆事業者意見
「列車の走行に係る微気圧波及び換気施設の稼働に係る低周波音については、供用後の環境管理を適切に行うことを目的に、事業者の自主的な取り組みとして、完成後の測定を実施し、結果を公表します。」
<検証>
 「低周波音」について知事意見では「換気施設」となっていますが、列車走行に係る「低周波音」が問題です。
 列車走行に係る「微気圧波」及び「低周波音」防音壁区間での騒音の原因であります。
「微気圧波」について評価書では「トンネル坑口緩衝工から20mで、42Pa、50mで、28Pa」となっていますが、音の大きさは普通デシベル(dB)で示されます。人間の聴覚で音を感知する音圧レベル、デシベルdBです。
42Paは126dB、28Paは123dBであり、非常に大きな騒音となります。従って実験線での体験を基に、防音壁区間を「防音防災フード区間」に変更するように各地で問題となっています。 
 
3 水質、地下水、水資源
◇知事意見
「(6)準備書においては個別の井戸に関する情報等が十分整理されておらず、地下水の水位に関する調査・予測が総括的になっているので、事業実施による個別井戸への影響の有無の判断に資するため、高橋の水文学的方法で求めた予測検討範囲内に存在するすべての井戸について、利用状況や井戸深等を着工までに把握すること。」
◆事業者見解
「工事の着手までに、高橋の水文学的方法で求めた予測検討範囲及びその周囲の個人井戸を中心とした水源を対象に、井戸の利用状況や水位について、関係市町や地元の協力を得て、聞き取り調査により把握します。」
<検証>
 「関係市町や地元の協力を得て、聞き取り調査」ではなく、複数年数・通年観測の「水文調査」を実施しなければ、正確な把握はできない。
◇知事意見
「(7)地下水の水位に関する事後調査について・・・具体的な事後調査計画を策定し、県及び関係市町に報告すること。」
「(8)河川の流量に関する事後調査について、・・・具体的な事後調査計画を策定し、県及び関係市町に報告すること。」
◆事業者見解
「事後調査の対象井戸は、地域特性を把握したうえで、関係市町や地元の協力を得て、一定の集落単位で代表する井戸を選定します。事後調査の対象河川は、水源としての利用があり、減水が生じた場合の影響が大きいと想定される河川も含めます。」
<検証>
 これも曖昧な表現であります。環境影響調査が文献調査主体で真面な調査はされてなく、これも複数年数・通年観測の「水文調査」を実施しなければ、正確な把握はできない。
<追記>
 新聞報道によると「岐阜県は2016年2月22日、リニア中央新幹線の建設予定地周辺でJR東海が実施した地下水と土壌の調査の結果、環境基準値を超す汚染物質が検出されたのに同社はからの報告がなかったと発表した。同社の認識不足が原因で、県は厳重注意した。」
 「県によると、今回問題となったのは2012年12月~14年1月の6例。同県多治見市の地下水から18.8倍の水銀が、同県瑞浪市では1.4倍のフッ素が検出された。」となっています。
 2012年12月は、環境影響調査の最中であり、このような事が明らかになったという事は、僅かに行われた調査においても結果を隠ぺいする体質では、評価書を信用することはできません。

4 土壌汚染
◇知事意見
「(1)イ 過去の事例から、有害物質を含む可能性が高いとされる美濃帯の泥岩・混在岩等の泥質岩については、事前のボーリンク調査等においてその存在を把握し、当該箇所に係る発生土のモニタリングはより詳細に行うこと。」
◆事業者見解
「有害物質を含む可能性が高いとされる美濃帯については、文献調査のほか、事前のボーリング調査等によりその分布状況を把握します。」
<検証>
 過去の「東海環状自動車道」のトンネル工事において「美濃帯」が掘り出され大きな被害が出た事例があり、本来は「美濃帯」を回避するルートを計画すべきであります。
 「文献調査のほか、事前のボーリング調査等」とこれも曖昧な表現であり、どこまでボーリング調査が行われるかわかりません。
◇知事意見
「(2)ウラン含有土壌に関しては、次の措置を講ずこと。」
「ア 文献調査で把握した計画路線上のウラン鉱床に比較的近い地域及び地質が類似している地域にあっては、事前のボーリング調査等においてウラン含有土壌の存在を含む地質の状況把握を行い、工事計画を定めること。」
◆事業者見解
「旧動燃は、約1400本のボーリング調査を行い、ウラン濃度を確認し、ウラン鉱床の位置を把握しています。計画路線はウラン鉱床を回避していますが、月𠮷鉱床北側の約3Km区間では土岐夾炭累層と花崗岩の境界近くをトンネルが通過します。その近傍における旧動燃のボーリングデータによると、土岐夾炭累層の放射線係数率は花崗岩よりも低い値を示していることから、ウランは蓄積されていないと考えます。」
「工事計画の策定にあたっては、計画路線上のウラン鉱床に比較的近い地域及び地質が類似している地域において、ボーリンク調査等により地質の状況を把握します。」
<検証>
 旧動燃の調査で「ウランは蓄積されていないと考えます。」という結論に至っています。2015年10月8日に「岐阜環境保全事務所」で要望書に対する回答を受けての問答の中で、その時点で「ウラン鉱床に対するボーリング調査は、行っていない。」という回答でありました。
 2016年2月16日に「春日井リニアを問う会」が実施した現地調査で、JR東海の主張する「3Km区間」とは別の路線上245キロ地点(岐阜県御嵩町)で、0.3マイクロシーベルトを超える値が計測されました。これは何を意味するのか定かではありませんが、やはり掘ってみないと分からないのが現実です。
 事前に路線上をしっかりとボーリング調査する必要があります。
◇知事意見
「イ ・・・ウラン濃度が高い発生土等が判明した場合の対応方法、放出されるラドンの把握及び管理を含めた対応等について、法令や既存事例を参考とするとともに放射能物質及び地質に精通した専門家の指導及び助言を受け具体的に定めること。」
◆事業者見解
「本事業において、万一、放射線量が比較的高い掘削土が確認された場合は、掘削土を覆土することにより敷地境界における放射線量を管理値以下に低減させるとともに,遮水シートなどを用いて雨水等の侵入を防止させることとします。」
<検証>
 「掘削土を覆土することにより敷地境界における放射線量を管理値以下に低減させるとともに,遮水シートなどを用いて雨水等の侵入を防止させることとします。」となっていますが、濃度の高い掘削度が出た場合に、これだけの対策で良いのでしょうか。

5 地形および地質

6 磁界
◇知事意見
「(2)磁界による長期的曝露が人体及び生態系に及ぼす影響について、今後とも知見の収集に努めるとともに、列車走行で発生する磁界が人体に及ぼす影響に関しては、第三者機関による評価の実施について検討すること。
◆事業者見解
「国の基準として定められているICNIRPのガイドラインを大きく下回り、磁界の影響については問題ないものと考え、第三者による評価を実施する考えはない。」
「動植物への影響については、予測評価が難しく取り上げていない。実験線では影響なし。」

<検証>
(1)極低周波・電磁波(磁界)の危険性について、WHOがファクトシート(事実情報)で2001年10月「ガンの可能性あり:2B」と発表、「予防的対策の勧告」をした。(朝日新聞01.11.5)
①WHOファクトシート322(07.6)による①短期的影響について
高レベル(100μTを十分上回るもの)の急性曝露によって起きることが確認されている生物学的影響がある。外部のELF磁界(極低周波磁界)は身体内に電界及び電流を誘導し、その強度が非常に高いと神経細胞や中枢神経に興奮性の変化を引き起こす。
②長期的影響の可能性について
疫学的に暴露に関連して小児白血病が倍増するという、一貫したパターンが示される。
JR東海の言うガイドラインをクリアーしているから安全というが、ELF磁界の危険性は0.3~0.4μT以上で小児白血病のみでなく様々な疾病のリスクが急増する疫学的研究報告が増加してきていることに留意すべきだ。
 特に、岐阜新駅付近は民家が密集し、路線から100m以内に小学校が存在する。また計画図によると、プラットホーム高架下が通学路になっている。電磁波の影響はもちろん、低周波音の影響も懸念される。
(2)ICNIRPのガイドラインは磁界(電磁波)の刺激作用や熱効果といった短期的作用の影響のみが考慮され、長期的慢性的な影響や非熱効果による生理作用が採用されていない。  
特に新陳代謝の激しい子供たちへの生理作用が懸念される。
(3)JR東海は「変動磁界の周波数の最大値は500Km/h走行時5.7Hz」としているが、これはリニア本体の移動に伴って生じる周波数のようだが、ガイドウエイの推進コイルに最大で50Hzの交流の大電流が外部から供給されるはずだし、リニアにはその他「中間周波数}「高周波」も使用されるはずだが、その強度に関しては公表されていない。
(4) 「第三者機関による評価の実施について検討すること。」という知事意見を否定しています。あらゆる情報を全て公開しないJR東海の姿勢からして、納得することはできません。 

7 日照阻害、電波障害
◇知事意見
「高架橋及び地上駅等の鉄道施設について、日照阻害を抑制する形状や高さとするよう配慮するとともに、季節
及び時間ごとの影響範囲を図示する等具体的なデータに基づき、着工までに影響を受ける地域の住民に対して丁
寧に説明すること」
◆事業者見解
「鉄道施設(高架橋、地上駅)の形状、高さ等の予測条件は第3章及び第8章に、代表地点における予測結果は第
8章に記載しました。また、予測結果を分かりやすくお示しするために日影時間の予測結果を資料編に追記しま
した」
<検証>
知事意見で、地上駅等について、「日照阻害を抑制する形状や高さとするように配慮すること」と指摘してい
るのに、現実は、知事意見を全く否定している。JR東海の公表資料(H25.11月)では、新駅舎は、長さ1km、幅50m、高さ20~35m(標高差のめた)の巨大なコンクリートの壁が続くことになる。地元地域住民の、影響を軽減するために、「せめて、地下駅にして、車両基地への引込線部分のみ高架にできないか」という切実な要望にも全く耳を貸さない。
 
◇知事意見
「高架橋及び地上駅等の鉄道施設の設置による電波障害について、列車走行時による影響を含めた具体的なデー
タに基づき、着工までに影響を受ける地域の住民に対して丁寧に説明すること」
◆事業者見解
「第8章に記載の通り、鉄道施設の存在による影響については、これまでに実績のある予測手法により定量的に
予測を行い、一部の地域において、電波の遮断によってテレビジョン受信障害を生じる可能性があると予測して
います。影響の有無については、工事の着工までに、影響を受ける地元の方々に丁寧に語説明してまいります。
また、事業実施後に障害が発生したと判断された場合は、共同受信施設の設置等の環境保全処置を講じてまい
ります。」
<検証>
 JR東海は、平成26年11月27日の地元地域住民に対する説明会では、電波受信障害について「通常
テレビ放送の良好な受信が可能な地域においてテレビ放送用の電波が、高架橋などの地上構造物の影響を受
けることにより、テレビ放送の良好な受信が困難となった場合には、良好な受信ができるように機能を回復
することに要する費用を負担する」と一般論として述べているだけであった。「例えば、○○の地点で、現
地調査したが、これぐらいの受信状況である」というような、分かりやすい説明ではなかった。知事意見に
ある「地域住民に対して丁寧に説明すること」にはなっていない。

8 動物・植物・生態系
◇知事意見
(2)車両基地、非常口、変電所等の土地改変を行う区域については、植物の生育状況、生態系の現状等を把握しこれらに配慮して施設等を決定すること。車両基地は猛禽類の生育エリアの一部であって採餌場になっているものと想定される。これの減少に留意して、改変区域の範囲、構造物等の配置に慎重に検討を。
(3)希少な鳥類に関して、特に種の保存留意。環境保全措置の実施。
(5)希少な植物について、移植による保全が難しい種に関してその生活史、生育環境の特性を踏まえて、環境保全措置を具体的に設定すること。
(6)湿地に関して、地下水の予測評価の検討範囲内のすべての湿地について、着工までに現状把握し、湿地に成立状況推定し、環境保全措置を講ずること。
◆事業者見解
(2)(3)について。改変区域を出来るだけ小さくする。車両基地を含む、千旦林地区の近傍で営巣が確認されたオオタカのペアについては営巣地からみて、土地改変の可能性のある範囲は小尾根の反対側であることから繁殖影響への影響は特別大きくないと考える。
 営巣地や繁殖期に留意してコンディショニング(段階的に施工規模を大きくし、徐々に工事に伴う騒音等に馴れさせる)の実施で影響を低減する。
(5)について。移植による保全が難しい種の移植は段階的に行う。
(6)について。トンネル区間の路線近傍の湿地において、昆虫類・植物の現地調査した。代表的な湿地を選定し、水文・地質環境の現状把握のための現地調査をした。その結果、東濃地域の湧水湿地は地層中の不透水層等の存在が湧水及び湿地環境を創出していると考えられ、トンネル工事に係る地下水低下による影響はほとんどないと予測され、湿地環境は保全されるものと予測した。それを踏まえてトンネル区間の湧水湿地のうち、一定の地域の単位で調査地点を選定し、工事期間中のモニタリングを実施し、保全措置を検討する。
<検証>
(2)(3)のオオタカについて
JR見解では、車両基地建設のための土地改変工事はオオタカの営巣地からみて小尾根の反対側だから営巣エリアを大幅に脅かされることはないとしていますが、基地予定地の北西側の里山も含め、基地予定地周辺部全体がオオタカの生息エリアとなっています。オオタカは極めて敏感な習性のため人間の動きを察知し、すでに営巣放棄など生育に影響が出始めている懸念があります。JR東海の行っている車両基地及び引き込み線に係る調査のみならず、岐阜県のすすめる濃飛横断自動車道(リニア関連工区)の現地調査でのコンサルタント会社の調査員の出入により、警戒感を強めているようで影響が出始めています。双方の工事が始まれば、オオタカの生息が脅かされることはあきらかです。
(5)の希少植物について
JR東海は、移植による保全の難しい種について、段階的に移植を行うというが、現在の生育環境を変えることにより生じる生息の困難性は広く知られており、移植に疑問視する専門家もいる。
(6)のトンネル工事に伴う地下水の予測評価について
JR東海は、トンネルは不透水層の下を貫通するので、工事に係る地下水の水位の低下による影響はほとんどないと予想され、湧水湿地の環境は守られるというが、地下は地質学的にそんなに単純な構造にはなっているとは考えられず、長年かけて湧水湿地に影響が及ぶ懸念があると指摘する専門家もいる。

9 文化財
◇知事意見
「(1)土地の改編の可能性のある範囲に存在する周知の埋蔵文化財包蔵地については、着工前に試掘・確認調査を行い、さらに必要に応じて本発掘調査を行うことになっているので県及び関係市と十分協議の上、対応すること。」
◆事業者見解要旨
「環境影響評価にあたっては、文献調査とヒヤリングによって、それぞれの物件の分布状況を確認したとしています。17カ所の埋蔵文化財に対して、土地改変を行う場合に県及び関係市との調整の上、必要となる届出を行い関係市の教育委員会による必要な試掘・確認調査を実施した上で、発掘調査を実施するとし、その結果重要な遺跡を発見したときは、その後の取り扱いは関係機関と協議しますとなっています。」
<検証>
 JR東海自体が直ちに、事前に詳しい調査をするべきところを、関係市の教育委員会に実質上の調査を任せることは、関係自治体の負担が多大となることです。教育委員会の指示に従って実行すべきだと思います。
 埋蔵文化財の把握にあたって、文献調査とヒヤリングを行ったとありますが、実際に現地に赴いて調査するくらいの誠意を示して頂きたい。 
◇知事意見
「(3)可児市久々利地内大萱地区の地上部の計画路線については、県史跡指定地域及び周知の埋蔵文化財包蔵地には該当していないが、今後、橋脚、切取区間等の改変区域を可及的速やかに明らかにした上で、県及び可児市と協議の上、古窯跡に関する重要な遺跡の有無を確認すること。」
◆事業者見解
「『大萱古窯跡群』及び埋蔵文化財包蔵地に接近しているこを考慮し、改変区域をできる限り小さくするため、・・・高架橋のスパンを通常より拡大し橋脚の数を減らすことなどを検討しています。」
「仮に、そのような古窯跡等が発見された場合は、橋脚の位置の調整等による回避について検討し、工事計画策定までに県及び可児市と協議します。」
<検証>
 「高架橋のスパンを通常より拡大し橋脚の数を減らす」とか「橋脚の位置の調整等による回避について検討」と述べているに過ぎず、根本的な解決方法ではありません。
 可児市長や可児市議会が求めているように、地上区間のトンネル化以外に解決策はありません。

10 景観
◇知事意見
「駅に係る景観影響については、今後の自治体との協議及び自治体側で行う駅前広場の整備によって景観が大きく変わることを理由に予測評価の対象とされていないが、駅を含む高架橋区間は景観が大きく改変することになるため、できるだけ具体的なイメージ図を評価書に記載するとともに、その影響が最小限となるような対策を講ずること」
◆事業者見解
「地上駅は、・・・自治体側による駅前広場等の整備によって、駅周辺の景観が大きく変わることから、地
上駅に関わる主要な願望景観及び日常的な視点場からの景観の状況は予測対象としないものとしまし
た。・・・なお、地上駅の標準的な構造の透視図等については、H25、5月に多治見市で開催した「中央新
幹線の説明会において公表しましたが、回送線を有する岐阜県駅の構造の透視図や、付近からの願望のイメ
ージを資料編に追記しました」
<検証>
知事意見の、「駅を含む高架橋区間は景観が大きく改変することになるため、できるだけ具体的なイメージ図を評価書に記載すること」は、今まで見慣れている景観がどう変貌してしまうのかという、関係する地域住民の切実な願いでもあった。しかし、JR東海は、車両基地付近や、苗木地区木曽川橋梁の部分は、現状の景観にCG化されたイメージ図を公表しているのに、新駅付近については、「予測対象としないものとした」として公表していない。
 これは、知事意見の全くの否定であり、新駅付近の景観保持について、その責任を、「自治体側による駅
前広場等の整備によって、駅周辺の景観が大きく変わることから」と、自治体に押し付けるものであ。

◇知事意見
「(3)車両基地の周辺は長閑な森林風景画が広がり、遠景に恵那山を望む良好な景観を有する地域であるから、構造物の配置等に配慮するとともに、その周囲を緑で覆う等により周辺の景観と調和するよう計画すること。」
◆事業者見解
「東側や南側の森林をできる限り残すように検討しており」
<検証>
施設外の他人の山の森林を残す記述されているのではないでしょうか。
中津川市の要求は、準備書等の資料を基に、車両基地周辺に植林して施設を見えなくすることを求めているものであり、回答になっていません。

11 廃棄物等
◇知事意見
「(1)事業実施に伴う発生土は膨大であり・・・様々な環境影響が生じる可能性があるが、発生土置き場等の具体的な位置・規模等の計画が明らかにされていない。」
◆事業者見解
「発生土置き場の設置に係る環境影響の調査、影響検討、環境保全措置、事後調査等については、ご意見に踏まえて、実施してまいります。」
<検証>
 2016年2月10日に「中津川市議会全員協議会」に中津川市側から「発生土置き場」の予定地が示されましたが、JR東海からは何の発表もありません。
 本来は、少なくとも「環境影響評価書」に記載するのが当然の事であります。


12 温室効果ガス
◇知事意見
「列車走行に係る温室効果ガスについて、東京都・名古屋市間の運行を対象とした予測評価を実施し、その結果を評価書に記載するとともに・・・列車走行に係る温室効果ガス排出量の削減に努めること。」
◆事業者見解
「列車の走行に係る温室効果ガスについては、速度域や到達時間が同等である航空機と比較して排出量が1/3程度と少ないため、環境影響評価項目として選定していません。」
<検証>
 在来新幹線の約3倍の電力使用量であることは、JR東海も認めております。
 また、評価書に対する「環境大臣意見」では「本事業の共用時には現時点で約27万Kwと試算されている大量のエネルギーを必要としているが、現在我が国が、あらゆる政策手段を講じて地球温暖化対策に取り組んでいる状況下、これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない。共用時におけるエネルギー消費量の低減と調達するエネルギーのグリーン化等を行い、大規模事業者として、温室ガスの排出低減に向けて主体的な役割を果たすことが不可欠である。」と述べられております。
 専門家によれば、JR東海の開発しているリニアモーターカーは非常に効率の悪いシステムであると言われています。エネルギー消費量の低減にも限界があり、計画の中止以外に温室ガス低減は図れません。


                                   以  上

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