2016年2月6日土曜日

それでもリニアには参画しない!ゼネコン社員の本音「死人が出ても・・・なんて時代じゃない」ニフティニュース 

それでもリニアには参画しない! ゼネコン社員の本音「死人が出ても…なんて時代じゃない」

2015年12月28日(月)6時0分配信 週プレNEWS


リニア建設工事の最難関とされる南アルプスの山梨県側、約8キロの区間で大成建設、銭高組、佐藤建設のJV(企業共同体)での落札が決まり、12月18日に起工式が行なわれた。来春には実際の重機による鍬(くわ)入れが始まるところまで来てしまった。
リニアの着工が始まってほぼ1年、その間も多くの問題をはらんだこの巨大事業に「JR東海は説明責任を果たしていない」として、市民団体などが異議を訴え続けている。
中心となって活動する「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」では、認可した国土交通省に異議申立書を提出、だがなしのつぶてで回答を先送りにする態度に、取り消しを求めての行政訴訟まで視野に入れていることを前回記事では伝えた。
さて、確かにリニア工事は着工された。リニアの始点でもあり終点でもある品川駅と名古屋駅でも資材置き場の建設などはすでに始まっている。だが、逆にいえば、営業本線を兼ねることになった山梨実験線の約43キロを除いて、着工されたのはその区間だけだ。他の区間は発注もされていない。
「それは当然だと思う」と語るのは某準ゼネコンのベテラン社員・Bさんだ。ちょうど1年ほど前の記事「リニア特需を期待?と思いきや、ゼネコンがどこも手を出せない理由」でも登場いただいている。
「危険なリニア受注で会社は損をする」として、リニア事業に参画するつもりはないと明かす内容だったが、その方針に変化がないかを再度尋ねたところ、きっぱりと「社長を筆頭に会社としてリニア事業には参加しません」と回答した。理由は以前とほぼ同じだが、若干の補足が必要だ。
―まず問題なのが、「総価請負方式」というものだそうですが…。
「総価請負方式とは、日本で一般化した請負形態。建設会社は請負報酬を一定の金額に定めて工事契約をします。簡単にいえば、これと決まった受注額以上は1円ももらえない。特にリニアは『JR東海の自費だけで建設する』のが前提なので、徹底されることになる。
でも、品川・名古屋の建設費5兆5千億円の見積もりをそのまま信じるバカはいない。おそらく、その2倍、3倍はかかります。となると、今、リニアを受注したら、本来もらえるはずの3分の1しかもらえないことになる。それも建設だけじゃない、水枯れを起こしたら、その補償だって30年間も当社がやる羽目になる」
―大成建設などは南アルプスの山梨県側工事を受注しましたが?
「大成建設はゼネコンでは唯一、世襲制ではない会社です。それはそれでいいけど、世襲は世襲で、経営の失敗で同族に迷惑をかけられないとの思いもあり、そこが暴走経営へのブレーキになっている一面はある。だが、大成は海外事業で赤字を出すなど失敗してもなんとかなるという、よくいえばチャレンジ精神、悪くいえば向こう見ずな経営色が強い。今回もリニア工事の先鞭(せんべん)をつけたという、名目を得たい思惑もあるのではと」

―では、他のゼネコンもリニアには参入しそうにない? 


「積極的に参入したいとの情報を私は得ていないです」 
―逆に考えれば、もしリニア建設への国費投入に踏み切ったらゼネコンの食指も動く…。
「可能性はあります。私の推測だけど、すでにゼネコンが国に金を出させようと働きかけているかも。JR東海なんかよりもそのへんはずっと得意な業界ですから」
―もし国費投入があれば、Bさんの会社も方針転換を?
「それでも参入はしない。特に南アルプスは超難関工事になるのは間違いない。トンネルから山の稜線まで、一番深いところで1400メートルもある。つまりトンネル工事では山のものすごい圧力で出水し、トンネル内が激流になるから人が死にます。昔のトンネル工事は人が死ぬのも当たり前だったけど、もうそんな時代じゃない。
それに、今はひとりでも死ねば、その企業の評価は落ちる。『受注者責任』も商法で厳格化されて、下請け、孫請け、ひ孫受けの社員が死んでも、それは元請けの責任になるから、昔のように知らんぷりはできない。だからゼネコンも慎重になっている」
―南アルプスはあちこちが地質のもろい『破砕帯』で構成されています。
「破砕帯っていうのは、常に水があちこちに泳いでいる。水の動きなんて読めないよ。掘ってみないとわからない。どこが受注するにしても、どんな工事になるのかは想定できないね」
本当にゼネコンは国から金を引っ張ろうとしているのか? そうだとすると、兆単位の金なだけにやがては発覚する。その時、今はリニアに無関心な国民もさすがに怒り、マスコミも騒ぎ、全国的な社会問題と化す。リニア実現には、これからが本当の闘いなのだ。
(取材・文・写真/樫田秀樹)

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