2015年7月7日火曜日

国際アピール 非電離電磁場への防護に関する科学者の請願(がうす通信より)

国連事務総長 Ban Ki Moon 殿 
WHO 事務局長 Margaret Chan 殿 
ならびに国連加盟各国の皆様

国際アピール
非電離電磁場への防護に関する科学者の請願

私たちは非電離電磁場による生物影響と健康影響に関する研究を行っている研究者です。 専門家による評価を受け公刊された研究に基づき、電気機器やワイヤレス機器が発する非 電離電磁場に常に曝露される機会が増加している状況に,私たちは深刻な懸念を抱いてお ります。非電離電磁場源としては非常に低周波の電磁波を放射する電気機器や送電線網は もちろんのこと、携帯電話やコードレス電話などの電波を放射する機器やそれらの基地局、 Wi-Fi や放送用アンテナ、スマートメーターやベビーモニターなどがありますが、それらに とどまりません。

私たちの共通の懸念に対する科学的根拠 最近の幾多の科学論文により、非電離電磁場が国際的、あるいは各国のガイドライン値よ りはるかに低い強さで生物に影響することが示されております。影響としては、発がんリ スクや細胞に対するストレスの増加、有害なラジカル、遺伝子損傷、生殖器官の構造的あ るいは機能的変化、学習・記憶障害、神経障害などの増加、ヒトの一般的な健康への悪影 響などが挙げられます。これらの傷害はヒトのみならず植物や動物にまで及ぶという証拠 が増えつつあります。

これらの科学的知見は、世界保健機構(WHO)がより防護的な電磁場ガイドライン策定の促 進に、より強い指導力を発揮し、また事前警戒的措置を促し、健康影響のリスク、とりわ け子供や胎児の発達へのリスクについて市民を啓発するよう、国連や世界の国連加盟国が WHO に働きかけることを求める私たちのアピールの根拠であります。措置が講じられない 場合、WHO は公衆衛生に関する世界で最も卓越した機関としての役割を果たし得ないこと になります。

非電離電磁場に対する国際的ガイドラインの不適切性 安全基準を設ける様々な機関は、公衆―特に非電離電磁場に対してより影響を受けやすい子供―を守るために十分なガイドラインを策定できていません。 国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は 1998 年に「300GHz までの時間的に変動する 電場、磁場、電磁場に対する曝露の制限に関するガイドライン」を規定しています。これ らのガイドラインは WHO や世界中の数多くの国によって受け入れられております。WHO はすべての国に対して ICNIRP のガイドラインを採用するよう勧告し、基準を国際的に一 致させるよう推奨しております。さて、ICNIRP 2009 年に 1998 年のガイドラインを再 確認するという声明を発表しました。これは、彼らが、1998 年以降に公刊された科学論文 において「高周波電磁場が基本的制限の範囲内で異常な効果をもたらすという証拠が示さ れておらず、したがって高周波電磁場に対する曝露制限の見直しを必要としない」と考え ているためであります。

ICNIRP は今日に至るまで、科学的にはそれに反する証拠が蓄積し つつあるにもかかわらず、このように主張し続けております。私たちは ICNIRP のガイド ラインは、これが長期的曝露や強度が低い領域での影響を考慮していないことから、公衆 の健康を守るには不十分だと考えております。

WHO は、2002 年には国際がん研究機関(IARC)の超低周波電磁場(ELF EMF)に対す る分類を、また 2011 年にはラジオ波帯輻射(RFR)に対する分類を採用しております。そ の分類では電磁場が「ヒトに対する発がんの可能性がある(グループ 2B)」となっており ます。この IARC の分類にもかかわらず、WHO は曝露上限値を下げることを正当化するに 足る証拠はないという立場をとり続けております。 電磁場の健康影響を防ぐための基準策定の論拠に関して論争があることから、私たちは国 連環境計画(UNEP)が、ラジオ波や低周波電磁場に対する曝露を、現状から大幅に低減 することの是非を調査する独立学際委員会を設けて資金提供することを推奨いたします。 この委員会の審議は透明性が確保され、公平性が確保された形で運用されるべきでありま す。産業界のこの審議への参加・協力は欠くべからざるものですが、審議の過程やその結 論を偏らせることがあってはなりません。審議内容は国連と WHO に提供され、予防的措 置に対する指針となるべきものです。

さらに全体として私たちは以下のことも要請いたします。

 1.子どもと妊婦が非電離電磁場に対する防護を受けること 
 2.ガイドラインと規制基準が強められること 
 3.産業界はより安全な技術の開発を進めること 
 4.電気の生産、伝送、分配、モニターは電力の適切な品質管理を行い、有害な接地電流 を低減
  するような配線を確実に行う 
 5.公衆に対して電磁場エネルギーによる健康リスクの可能性を十分周知し、またリスク 低減の
  方法が教えられるべきこと
  6.医療関係者に対する、電磁場エネルギーの生物学的影響に関する教育を行い、また電 磁場
  過敏症の患者の治療に関する訓練の機会を設けること
 7.政府が、電磁場と健康に関する教育・研究に対し、産業界とは独立な形で資金提供を 行う
  こと、並びに産業界が研究者に協力するよう指示すること 
 8.メディアは、電磁場を放出する技術の安全性や健康影響についての専門家の意見を引 用する
  場合には、その専門家の産業界との資金的つながりを明らかにすること 
 9.ホワイトゾーン(人工的な電磁輻射のない場所)をつくること 
                                   以上

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