朝日新聞(2017年5月14日)
希少種保護求める助言役に退職届 リニア残土処分候補地
編集委員・伊藤智章
2017年5月14日06時00分
リニア中央新幹線の建設残土処分候補地の一つ、岐阜県御嵩町の山林に、希少植物のハナノキやシデコブシが群生していることが分かった。保護を求める町の生物環境アドバイザーがJR東海に問い合わせたところ、町は「ルール違反」だとして注意し、退職届に署名するよう求めた。
現地は、同町美佐野のリニアのトンネル出口予定地近くにある山林(約90万平方メートル)。町有地と民地が混在し、かつてゴルフ場が計画されていた。町は県を通じ残土処分の候補地に挙げ、JRが調査している。工業団地にする構想もあり、地元には埋め立てを歓迎する意見もある。
現地には、住民の調査で希少種のハナノキの成木80本、稚樹400本以上が見つかった。希少植物のミカワバイケイソウ、シデコブシの自生や、希少鳥類のサシバの営巣やミゾゴイが目撃されている。
処分地に正式決定しておらず、JRは環境保全措置を公表していない。だが保護関係者によると、最低限の湿地保全、植物移植、種子保存の準備には1年以上かかるという。
自然保護に携わり、町が生物環境アドバイザーや希少野生生物保護監視員を委嘱する和裁士篭橋まゆみさん(62)は3月、JRに環境調査の報告会の予定などを電話で問い合わせた。
だが町は「準公務員的立場なのに、町を通さずにJRと連絡を取ったことはルール違反」と指摘。4月21日、町職員が篭橋さんを公民館に呼び、注意した。
今後も行動を制約されると告げられ、篭橋さんが「辞めればいいのか」と話すと、職員は事前に用意した退職届を示し署名を求めたという。篭橋さんは町に理由を示して解職するよう求めているが、町は応じていない。担当者は取材に「こちらから『辞めてほしい』とは言っていない」と話す。
篭橋さんは「いま動かないと間に合わないのに、町はJRに意見を言うどころか、口封じだ」と話す。
渡辺公夫町長は「処分地は正式決定していない。今後のJRの計画次第では断ることもできる」と取材に説明する。篭橋さんについては「肩書を利用してJRと話しており、見過ごせない」と話す。ただ、アドバイザーを設ける町指針に解職規定がなく、町は本人から退職の申し出がない限り、2年後の任期満了まで委嘱を続けるという。(編集委員・伊藤智章)
◇
〈ハナノキ〉 カエデのなかまの落葉高木。日本固有種で、環境省のレッドリストでは、絶滅の恐れがある絶滅危惧2類に分類される。岐阜県東濃地方を中心に長野県や愛知県の限られた山間湿地などに自生する。春に赤い花をつける。愛知の「県の木」とされている。
昨日(日曜日)の朝日新聞をご覧になりましたか?
伊藤智章記者が、美佐野のハナノキ湿地のことについて
大きな記事を書いています。
社会面(第29面)の左側です。
籠橋さんに対して役場が攻撃していることを
丁寧な取材で書いてくれているのです。
これで、あの湿地を守る戦い、ひいては、東濃地区を通過するリニアとの
全面的な戦いになったのだと思います。
あの湿地の大切さを明らかにするための、
見学会とか、講演・学習会を
御嵩町、あるいは可児市、あるいは名古屋市で開催しませんか。
篭橋さんを応援する闘いでもあると思います。
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これで、あの湿地を守る戦い、ひいては、東濃地区を通過するリニアとの
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