リニア・市民ネット ブログ
2017-09-09 静岡から南アルプスの生き物たちに代わって意見陳述「ストップリニア
ストップリニア!訴訟第6回口頭弁論 9.8.2017
静岡から南アルプスの生き物たちに代わって
林さん(リニア新幹線を考える静岡県民ネットワーク共同代表)
残土置き場の危険性
南アルプスエコパーク内の、リニア本線、導水路、工事用トンネルなどによる発生土370万トンの置き場として、JR東海が示す燕沢(つばくろさわ)周辺他8箇所。この付近に3回調査に行き、その実感から静岡県の財産を壊すリニア計画の危険性について話します。
高さ65メートル、長さ数百メートルに及ぶ発生土置き場の案が示された燕沢付近は、稜線近くまでガラガラと崩れていて、大井川まで礫が溢れています。地質学者はこの辺りは泥と礫の層になっており、地層の傾斜が地形の傾斜に対して交差している「受け盤」ではないか、だとすると逆側の地層の傾斜が地形の傾斜に対して同一方向の「流れ盤」で、これが危険だと指摘されました。実際に防災科学研究所の地滑り分布図においても、大規模地滑り、崩壊地と表示されています。これまで何度となく地滑りを起こしたことは、大井川河岸の若い植生を見ればわかります。(写真・図)
国土地理院の空中写真・その辺りはいく筋もの流路らしきものが見て取れ、地滑り地形の「安全弁」=流れを変える大井川の「遊びの部分」であることがわかります。もしここに65メートルにもなる発生土置場が設置されたらどうなるか、大変な危険を覚えます。
生物圏保存地域
ここはエコパーク移行地域、生物圏保存地域です。その名の通り「生態系の保存と持続可能な利活用の調和」「生物多様性の保護」を目的としています。燕沢付近の大井川流域は「ドロノキ」の自生地で本州の分布南限とされる「オオイチモンジ」(蝶)は環境省のレッドリスト絶滅危惧2類、静岡県のレッドリストでは絶滅危惧1A類と、最も保全が急がれる種です。そのオオイチモンジの幼虫は、このドロノキを食料としています。発生土置き場の設置で流失の危険性が増します。
また樹齢100年を超えるカラマツ林も破壊されることになります。
静岡市もエコパークの継続に危機感を持っており、リニア新幹線建設は、静岡市民の財産である自然と安全を壊すもので、到底認められません。
服部さん(焼津市在住、登山家)
登山歴46年、私たち岳人は、リニア・トンネル工事による南アルプス南部の自然破壊に対し深く憂慮しています。本日私は登山者の代表として、また物言えぬすべての命に代わって、裁判官各位に訴えます。
トンネル掘削による地下水脈分断
静岡県の北端でリニア路線が横切る地域を「南アルプス南部」と呼びます。頂点は3000メートル峰で、そこから駿河湾に流下している130キロメートルの大井川。その最上部地下をリニアが貫通します。静岡県におけるリニア問題は、ここ大井川最上流部に集中しています。
この拡大図を見ると、まるで毛細血管のように無数の枝沢=谷が本流に注ぎます。この無数の支流が減水、ないし枯れる恐れがあるのです。資料によれば「二軒小屋」付近が毎秒2トン強の減水予測で、ここは登山基地です。南アルプスの真っ只中です。毎秒2トンは冬の渇水時は本流が干上がることになり看過できません。
保全策として、JR東海は「導水路トンネル」を計画。トンネル内にあふれ出した水を集めて11.4キロメートルほど下流の椹島(さわらじま)で本流に放水、「水を戻す」という案です。
しかしこれでは根本解決になりません。水が戻るのは椹島より下流のみ、上流部は一滴の水も戻らないのです。すなわち「人間の都合」しか考えていない保全策です。
「隣に似たような谷があるから大丈夫」?!
環境アセス書でJR東海は「周辺に同質の環境が広く分布するから影響は小さい」と記述していますが、そんな単純な話ではありません。その谷に棲む水生生物、魚、植物はどうやって移動するのでしょう。また簡単に「重要種の移植」を持ち出すのも水を戻さず見捨てるという宣言であり、この言い訳は免罪符にすぎません。
そもそも重要種とそうでない命をどうやって決めるのか?厳しい自然条件の中で南アルプスに生きる命への敬意のみじんもなく、心の震えが止まりません。生き物の生息場所には皆理由があり、安易に「移植」などすべきではありません。この7月に奥西河内(おくにしごうち)の水源調査に行って、2.350メートル地点の谷筋でツキノワグマの糞を発見しました。山は彼らのものです。彼らが生きる場所です。この谷は彼らが命をつなぐ場所なのです。この谷水を減らしては、枯らしては決してなりません。
「上流部の谷に水を戻せないなら、工事は中止してください」これが、南アルプスに生きる生き物と私たち登山者の思いです。ずさん極まりない、甘すぎるアセスメントを追認した国土交通省の、リニア工事計画認可の取り消しを求めます。
西ケ谷弁護士(原告ら訴訟代理人)
大井川の清流をこよなく愛する静岡県民として意見します。
「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」
江戸時代から愛されてきた、馬でも容易に越せぬほど水量の豊かな大井川です。川越し人足の文化、宿場町などができて、水量の豊富な大井川によって形成されてきた歴史があります。明治時代には水力発電も行われて現在に至ります。また、流域の工業発展、世界一長い木造の橋としてギネス認定された蓬莱橋、SLの大井川鉄道、周辺観光産業など、大井川の重要な役割です。
最重要なのが、大井川流域の住民約63万人が、生活用水として、農業用水として、直接的に利用していることです。水量の減少は暮らしに大きく影響します。
リニア計画では静岡県としては北端部の山間にトンネル約11キロの掘削が予定されていますが、全計画からすればわずかな区間ですが、しかし掘削により発生する大量の土の置き場、作業員の宿舎、その環境への影響は十分検討されないまま本件認可処分が下されました。
毎秒2トンの減水は約63万人が上水道を利用する大井川広域水道事業団の水利権量と同じ量です。今夏52日間もの長期にわたり、8市1町で生活用水5%、工業用水10%、農業用水10%の取水制限がありました。雨が少なくダムの貯水量が平年の70%まで低下したことが原因です。本件工事が水量減少に具体的な対策のないまま認可されたことは環境影響評価法に違反することは明らかです。
導水路トンネルは環境アセスなし?
認可処分の後に、JR東海は導水路トンネルを新たに作って減水した水を本流へ戻すとしましたが、全ての量の回復はできないと認めています。しかも、この導水路設置計画は、新たに支流の沢枯れが生じる可能性もあり、周辺環境へのさらなる悪影響が懸念されるのです。しかし認可処分後の立案であることから環境影響は考慮されません。環境影響評価を経ないでこのような大規模な追加工事が容認されてしまうのであれば、環境影響評価法に基づく規制は全く無意味なものとなってしまいます。
この地域はユネスコのエコパーク指定を受けた南アルプスに属しており、ヤマトイワナ等、極めて多くの希少生物の生息が確認されています。JR東海は「影響が出たら移植」など、事後的対応を予定するだけで、十分な配慮を行なっていません。
10年にわたる長期に最大7000人の作業員の宿舎
その生活排水など、大井川流域環境にとってどのような影響があるのか、宿舎についての環境影響評価もありません。このように重大な問題を多発させる無理な計画と言わざるを得ません。
先日大井川支流の調査に行って、清流を悠々と泳ぐイワナの群れを目撃しました。この光景を見て、この素晴らしい清流をどうしても守り、次世代に引き継がなければならない、という思いを改めて強く持ちました。(動画)
裁判官の皆様、国やJR東海の関係者に、一度大井川上流域に足をお運びいただきたい、大井川の壮大な自然を体感していただきたいと思います。
都市と都市との間を迅速に結ぶ、人間中心主義の利便性と引き換えに多くのものを失いかねないこのリニア計画の認可処分は、速やかに取り消されるべきです。
参照資料;冒頭の林さんのお話の地質学者の先生の指摘「受け盤・流れ盤」について、参照してください。
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